谷川流・著/いとうのいぢ・挿絵『涼宮ハルヒの分裂』の感想
「涼宮ハルヒの分裂」読了、これまで既刊はずっと後追いだったが、今回の最新刊にしてようやく、リアルタイムに読むことが出来たことは何とも喜ばしい。さっさと読み進めたかったため、ザ・スニーカーに掲載された冒頭100枚はとりあえず飛ばして、読み始めた。
まず、新キャラクターとして登場したキョンの中学時代の友人・佐々木は実は女性だったということ。ハルヒに無意識レベルの変化が起こった
というくだりから女性である可能性は充分に考えられたが、いざ作中でその事実が明らかにされると驚く。語り口調や“僕”という一人称に見事に騙された。キャラクターを絵という情報で表さなければならないマンガやアニメとは違い、挿絵を除けば文字情報のみの小説だからこそ出来た演出だ。マンガやアニメにする場合は、少々難しいだろう。文庫本冒頭の扉絵では、既に佐々木の姿がいとうのいぢ氏によって描かれているため、そこを見て大体の察しがつく、とも言えるが。
現時点のハルヒシリーズに於いて時系列的に一番新しい話であるため、これまで起こった出来事が折り重なり、これまでで最も“続巻らしい続巻”となっている。「涼宮ハルヒの陰謀」、「憤慨」で漠然と示された伏線、新キャラクター、新勢力の謎が次々と明らかになる。ただ、「驚愕」と合わせて上下巻構成であるため、ストーリー展開は緩やか。それでいて、裏でうごめいている陰謀のようなものが見え隠れするという、不気味な雰囲気も確かに存在する。
途中、これまでにないスタイルの書き方になる。同じ時系列にありながら、少しずつ違った展開を見せる2つの時間が同時進行するようなこととなる。まるでパラレルワールド、同時進行する2つの時間は小説の便宜上“α-n”と“β-n”で示された。まだ意図は不明だが、これが“分裂”なのだろうか。β-6のまま「分裂」は終了、続きは「驚愕」に。
全体を通し、余裕を持ってストーリー展開をしていると感じる。まだ上巻であるため、これから起こるであろう大事件のあくまで序章でしかない。未来人、宇宙人、超能力者のそれぞれと対する格好となっている新キャラクター同士、同盟のようなものを結んでいるものの結束は弱く、目的や意図は示されるものの、まだ漠然としている。今巻で最も衝撃的な出来事が起こり、“敵”が動き始めたところで“続く”となる訳だが、終わらせ方が少々ずるい。
余談だが、表紙と挿絵を担当しているいとうのいぢ氏の絵柄に変化が出てきたように感じる。アニメの後だからか、アニメのキャラクターデザインを意識しているような。
今回の表紙は“ハルヒの全身”だったが、「驚愕」の表紙は”長門の全身”だろうと予想する。本編を読んでの予想と、ファンとしての希望を織り交ぜつつ(笑)。