コミックチャージ 11号掲載 『アルカイック スマイル』第2話(前編)の感想
コミックチャージ 11号に掲載された、たかはまこ氏が原作、貞本義行氏が作画を担当した合作『アルカイック スマイル』 第2話(前編)を読んだ。月刊少年エース誌上で連載中ということになっている『新世紀エヴァンゲリオン』はしばらく休載しているいるため、久しぶりの新作になる。
また、約1年2ヶ月前、2007年3月末に発売されたコミックチャージ 創刊号に掲載された読み切り作品『アルカイック スマイル』の後日談の前編でもある。前回最後のページのアオリには、
新作、鋭意準備中!
次回作にご期待ください!
コミックチャージ 創刊号 より
と書かれていたのだが、よもや本当に新作が描かれるとは思ってもみなかった。もしかしたら『ヱヴァ新劇場版:破』の貞本氏が関わるセクションは作業を終えたか、あるいは関わるセクションの作業に入ることができず、仕事に余裕が生まれたため、今回の新作執筆、掲載が決定したのかも知れない。
『エヴァ』以外で、2話以上連続したマンガ作品は、1994年に月刊ニュータイプ誌上で発表された『孤島の鬼』以来、約14年ぶりのこと。これはある意味で、近年の貞本作品の中でも快挙というか、異例のこと。
ちょっとした感想文を書いてみた。
男に冷たい態度など取られたことがない“社内一の美人”柚木遥は、自分に興味を持たず、そっけない態度を取り続ける小早川満の気をうまく引き、そのあと捨ててやろうと企んだ。しかし、小早川は生身の女性にほとんど興味がない、仏像マニアであった。真剣に仏像を愛する姿を見て、いつの間にか小早川を本気で好きになってしまった柚木は、仏像から自分へ、振り向かせようと決心するところで、前回の第1話は終わった。
はじめからアタックを続いている柚木に対し、小早川は例によって無意識下で華麗にスルーしていくところが、相変わらず面白い。そこに、柚木が3ヶ月前まで付き合っていたアキヒロという男、小早川が参加した仏像マニアのオフ会にいた春日野という女の登場により、さらに一筋縄ではいかない展開となっている。また、アキヒロ、春日野の二人のうち特に春日野は、これまでの貞本キャラにはいなかったタイプのビジュアル。新しいタイプのキャラクターを出せるのも短編読み切り作品の強みだ。
元彼氏のアキヒロに偶然再会し、よりを戻そうと迫られ逃走、どさくさに紛れて小早川と合流する柚木。無事同じ電車に乗ることができ、隣に座ることができると、ここぞとばかりに安心したら疲れちゃった ちょっと寄りかかっていいですか?
と声を掛けるも、断る!
と一蹴され、自分が立て替えた切符代を請求されてしまう。ついにはなんで私… こんな男が好きなんだろう…
という疑問まで生まれ、第1話のラストで描かれた小早川に好意を持ってしまったことに戸惑うところから、さらに一歩踏み込み、何かを越えてしまった瞬間のように思えた。
ここからは全くの憶測なのだが、なんで私… こんな男が好きなんだろう…
という柚木の中に生まれた疑問は、貞本氏の奥さんであり原作者、たかは氏の本音でもあるのではないだろうか。やや安易な結び付けではあるが、小早川と柚木は、そのまま貞本夫妻に置き換えられると思う。今回この作品を読んで、月刊少年エース 2002年12月号の付録「特別編集版・貞本義行100P読本 お貞本」に収録された、たかは氏が貞本家の日常を描いた『お父さんの普通の生活』を思い出した。普段格好良く見える貞本氏も自宅ではマイペースに暮らしていて、たかは氏が呆れる様子が描かれているのだけど、今回の話にも通じる部分がある。
『エヴァ』との差別化を図るためにやっていることかも知れないが、タッチを微妙に変えて描いているように見える。マンガの絵が持つ雰囲気は、現在のように良くも悪くも洗練された線になる前の、初期の『エヴァ』、それ以前の短編『孤島の鬼』辺りのものを感じた。また、初期の『エヴァ』における葛城ミサトに代表されるように、貞本キャラは本来は表情豊かだ。ここ数年間の『エヴァ』ではなかなか見ることができないが、短編では表情豊かなキャラクターたちを見ることができる。特に、3ページ目の最初のコマ、浮かれる小早川の表情には懐かしさすら感じた。以下に引用。

アニメの画をそのままマンガに持ってくるような手法が多く取られており、内容も『エヴァ劇場版』に突入して重々しい最近の『エヴァ』に比べて、線もキャラクター自体もキャラクターの表情も生き生きとしている今回の作品は、純粋なマンガ作品として、純粋に楽しむことができるものだと思う。『エヴァ』をマンガとして否定している訳ではないが、“本来の貞本マンガはここにある”、ということを声高に主張したい。
第2話(後編)は、6月3日(火)に発売されるコミックチャージ 12号に掲載予定。