OVA『哭きの竜』について、岡田斗司夫の同人誌収録のコメントを絡めて紹介
ガイナックスの公式資料やホームページ上には、ほとんど情報が載ることのない黒歴史作品のひとつ、能條純一氏原作の『麻雀飛翔伝 哭きの竜』がバンダイチャンネルで配信開始された。情報元はアニオタフォース。
岡田斗司夫氏が社長を務めていた時代に制作されたOVA。「ガイナックス制作」となっているが、実制作はマジックバスで、『王立宇宙軍』や『トップをねらえ!』などで出来た借金を何とかするための、岡田氏が言うところの「左手仕事」。バンダイからの予算をガイナックスが数割抜いて、他社に流して制作された作品だ。
配信ページの「ここが見どころ!」には氷川竜介氏が、
竜役の池田秀一をはじめとするベテラン声優陣の重々しい演技と、原作のシャープな絵柄を濃密な作画で完全再現した映像の相乗効果で、まるでその場にいるかのような緊迫感に心臓が弾む。
といった文章を寄せているが、大げさに書いているというか、詐欺に当たるんじゃないかと思うほど実際の出来は酷い。
岡田氏の同人サークル「ロケット野郎」から2000年に発行された『超おたく!』に、トークイベントでの『哭きの竜』への言及が収録されている。
岡田 (中略)「マジックバスさん、今回の作画はどこに気合を入れますか。それを持ってもう1回竹書房に行きますから」「そうですね。麻雀牌の文字を完璧なパースで動かすというのはどうですか」(爆笑)。これだから職人はイヤだよ。「ロン」と言ったとき、ハツとかチュンとかイーソーとかがきれいに倒れるんですよ。勘弁してくれよ。
堤 どうしてそちらに行っちゃうのかな。
岡田 しようがないから、困ったときは透過光。透過光でピカッと光るエフェクトがあるでしょう。あれは案外安いんですよ。とにかく竜が「ポン」とか「チー」とか行って泣いたときには、かならず盤面の上に光のドラゴンがアンギャーと出てきて、「竜が牌を食った」というときは、本当にドラゴンが牌を食っている絵(笑)。
同人誌『超おたく!』(ロケット野郎・2000年発行) より
監督の出崎哲氏は、当時から継続してマジックバスの社長を務めている。パースにはこだわったのかも知れないが、麻雀シーンでひとりでに牌が倒れるのには驚く。
岡田 (中略)そこに、池田秀一さんが、池田秀一さんの今までの声優人生の中で最も楽な仕事と喜んでいただいた。何せ「ポン」「チー」「カン」しかセリフがないんだから(爆笑)。
同上
脚本には山賀博之氏の名前がクレジットされている。『トップをねらえ!』、『おたくのビデオ』では、わざわざ岡田斗司夫名義にして名前を隠したのに、何で『哭きの竜』ではそのままクレジットに名前が出ているのか分からない。
岡田氏が言っているように、本当に麻雀シーンでは「ポン」、「チー」、「カン」などのセリフしかない。ごくたまに「あンた、背中が煤(すす)けてるぜ」などがある程度。
岡田 (中略)「哭きの竜」の収録も無事に終わってフィルムができたら、初号試写というのが調布の東京現像所であるわけだ。
堤 ゼロ号。
岡田 そこで見てオレは大爆笑して、スタッフもみんなガイナックス側は爆笑しているの。マジックバス側はまじめにつくった作品で、何でガイナックスの人たちはあんなに笑っているんだろうと思っている。オレとか庵野とか山賀とか大笑いで、「本当に竜が牌を食う」「最高!」とか言って、「プーッ」(笑)。(拍手)
同上
アニメの粗製濫造や、出来の悪いOVAをさんざん批判していた庵野秀明氏も、一緒になって大笑いしていたのが面白い。きっと若かったんだろうなぁ。以下に参考資料。
単純に面白いアニメを観たい人には、全くもっておすすめできない。しかし、『トップをねらえ!』、『ふしぎの海のナディア』、『新世紀エヴァンゲリオン』、『天元突破グレンラガン』など、華やかなガイナックス作品しか知らない人には、「ガイナックス制作」と銘打たれた作品の中にも、こんなのがあることはぜひ知ってもらいたいとも思う。