江川達也vs佐倉大 あんのひであき: 序破急

庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載

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オリジナルビデオコレクション 美少女アニメくりいむレモン より

江川達也×佐倉大×あんのひであき

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1984年制作の『くりいむレモン』に参加した佐倉大氏とあんのひであき氏、デビューしたばかりの江川達也氏をゲストに迎えて行われた座談会。

―現在、『コミックモーニング』(講談社)に『BE FREE!』を連載中の人気漫画家・江川達也氏をむかえての特別対談。アニメからマンガまでいろいろな話題について語ってもらいました。

佐倉

「どうも始めまして佐倉です」

江川

「どうも初めまして」

佐倉

「今日はお忙しいところをわざわざきていただいてありがとうございます」

江川

「いやあこちらこそ」

佐倉

「『BE FREE!』の連載が初まったときからファンだったんですよ」

江川

「そうなんですか。ああ、ファンがいたんだなあ(笑)。正直なところ、いま一つマイナーなんで、読んでいる人がいるとわかると嬉しくって」

佐倉

「はあそうなんですか、意外ですね」

江川

「あっそういえば『ポップ・チェイサー』見させてもらいましたよ。なかなかすごい作品ですね。おもしろかったです。」

佐倉

「どうもありがとうございます。そういっていただけると非常にうれしいです」

江川

「あれは佐倉さんが監督なわけですか?」

佐倉

「ええ。監督、演出、絵コンテ、キャラクターデザイン、作画監督とあと原画のほうもちょこっとやってますけど」

江川

「ほお~~~っ、すごいですね」

佐倉

「いやあ、単にやる人がいなかったんで自分でやることになっただけです。でも監督とか演出なんて今回が初めてだったもんで、いろいろなもの参考にしたんですけど、江川さんの『B・F』なんかもだいぶ参考にさせてもらいました」

江川

「あっどうも。でもそんなに参考になりましたか?」

佐倉

「いや『B・F』ってすごくこってるでしょう。コマの中の構図とか細かい部分の描き込みとか。だからいつも読んでて感心しちゃうというか。よくまあこんなに描き込むなあと思ってたんですよね」

江川

「いやあ、うれしいなぁ。毎回描くときにけっこういろいろ考えてやってるんですけどね。あんまり気付いてもらえないみたいで少しさみしいなあなんて思ってたんだけど」

佐倉

「江川さんのマンガってすごく映画的というか、映像的な部分があるでしょう。あれにいつも感心させられてるんですけど。あの、笹綿が虎子光に変相して対決する回(単行本2巻)で逃げる笹綿のバイクを虎子光が車で追いかけるところなんか、ずっとクレーンカメラで追ってるようなコマ割りでしたね。あれはスゴイ!大変だったでしょう」

江川

「えへへ、あれ大変だったんですけど、いま一つ効果がなかったんじゃないかと思っていたんです。ああいうわけのわからない部分に思わず力を入れてしまい、結局自分の首をしめてるんですねー。なにか映像的に変わった見せ方ができないかと思って、実写やアニメの手法を引っぱってきたりするんだけど反応があまりなくてねぇー。うれしーなー、気がついてくれる人がいたとはっ」

佐倉

「いや―――、よく仲間うちで『B・F』をアニメでやってみたいなんて話してるんですけどね。江川さんがいわれたように映像的な部分が多いし、人間のアクションが多いでしょ。非常におもしろいものになるんじゃないかと思うんですよね。丘野と笹綿が自転車とバイクで虎子光とやり合うシーン(単行本1巻)なんかメチャクチャおもしろくなるんじゃないすか?」

江川

「作者としては実写でやって欲しいと思ってるんです。自転車とバイクがつるんでスーパーカーとチェイスするとこなんか、特撮しちゃうとかなりおもしろいんじゃないかなあ。実写だとマンガとはまったく離して考えられるから。『ああ、学園ドラマだぜ』って感じで笑えるけど、アニメになると“スカ”の場合非常に気になってしまうたちなので……。『ああ、自分でコンテ切って仕上までやりたいなあ』と思ってしまう。もちろん信頼できるスタッフでしたら、もう手離しでおまかせしたいですが……」

佐倉

「江川さんはアニメのほうはけっこう見ていらっしゃるんじゃないですか?」

江川

「いや、まあ特に熱中してってわけじゃないんですけど、いちおう人並に……。ただ、大学時代にクラブでアニメ作ってましたから見方はきっと普通じゃないけど。3年と4年のときに、『きつね対たぬき』と『鬼の哭く谷』っていう3分と10分ぐらいのセルアニメをみんなで作ったりしてたんですよ。そんなこともあってアニメをやるんなら自分でやりたいなあなんて思ってるんですよ」

佐倉

「セルアニメで3分とか10分っていっても大変だったでしょう」

江川

「いやー、一緒にやった背景や彩色の人が大変だっただけです。私の悪いクセで、動画にびっちり描き込んじゃうもんで、まわりの人間にいやがられたりして(笑)。プロと違ってクラブだから本当に素人なわけでしょ。そんな人たちに、複雑なメカの中割りや彩色とか緻密に描き込んだ街のフカンを背景動画させた私がまちがっていました。で結局、一番最後は自分のカットは自分で、原画から仕上げまでやるということになってしまい、そうなるともう自分でやるんだからということで本当に緻密になって自分を苦しめてしまった。トレスに1枚6時間かかるやつとか……。1人SMの世界です」

佐倉

「ハハー、そりゃすごい。そこまでやってたとは思いませんでした。『B・F』を読んでるといろいろアニメをネタにしたギャグなんかがときどき入ってるから、この人はけっこう見てるんじゃないかとは思ってたんですけど」

江川

「でもそういうのに気がついてくれるのは、やっぱりアニメファンの人だけですね。普通の人じゃやっぱり知らないから」

佐倉

「でも、『どらどら子猫とちゃかちゃか娘』のカンバン(単行本2巻)には大笑いしましたけどね」

江川

「あっ笑えました? あのタイトルの響きがなんともいえない。ちゃかちゃか娘に金髪の頭がおかしい娘がいたでしょ。あれが好きでして。その娘が悪いやつにつかまって、自白機みたいのにかけられちゃう話で、まったく関係のないわけのわからないことを口走るところが実によかった」

佐倉

「めいっぱいマイナーな話題だ(笑)」

江川

「まあ、あといろんなところでパロディをやってるんですけどね。『009』や特撮ネタを入れたりとか。ただやっぱり『モーニング』って普通の人が読者層だから、あんまりやりすぎちゃうとわけがわからなくなっちゃうから。あくまで遊びの部分でやってますけど」

佐倉

「話は変りますけど、江川さんの描き込みの密度っていうのは豪快ですね。単に描き込んでるだけじゃなくて、アングルなんかもかなりこってるというかひねくれてるというか(笑)」

江川

「いやー、そんなにほめてもなんにも出ませんよ。なるべく人があんまり描かないようなアングルで描きたいなあと思ってます(笑)。もっともっと上手くなりたいと常々……。大友克洋さんぐらいの画力が欲しい」

佐倉

「ニャルほど(笑)。でも、僕らなんかアニメの原画を描いてるんで、構図なんかが非常に気になるもんですからね。『P・C』(ポップ・チェイサー)の絵コンテを描いてるときにもいろいろと悩んでたもんで、いつも『B・F』の単行本を見てレイアウトなんかを参考にさせてもらってたんですよ」

江川

「えーっそうなんですか。もっと良かったじゃないですか。メカのシーンなんかも良く動いてたし。特にナニのシーンはすごかったですね(笑)」

佐倉

「江川さんだっていろいろ描いてるじゃないですか(笑)。笹綿の夢の話にはまいった。32ページあれだけ(笑)」

江川

「いやあれはウケを狙ってやったんです。僕の師匠は本宮ひろ志先生、先生にスケベは売れるぞっていわれたもんでついつい……」

佐倉

「でもずいぶん気合いの入った描き方じゃなかったですか?」

江川

「『P・C』だってすごいじゃないですか。あの描写の細かさは見てて驚きましたよ」

佐倉

「いや、あれはあそこを担当した原画のほうがめちゃくちゃうまかったからで、僕の力じゃないですから」

江川

「でも絵コンテ切ったのは佐倉さんでしょう」

佐倉

「まあそうですけどね。でも最終的にあのシーンが良かったのはやっぱり原画の力が大きいんですよ。それにああいうシーンは描いててつまらないし、僕としては興味ないんです」

江川

「そうだったんですか。実は僕も正直なところ、女の人の裸を描いたのは『B・F』が初めてなんですよね。本宮先生や編集の人にいわれてついつい描いちゃったんですけど、本当はあんなもん描いててもつまらないんですよ」

佐倉

「いやあー、まったくですね。なんでみんなあんなもんに興味持つんだろう?」

江川

「なぜなんでしょうねー」

佐・江

「う~ん」

―2人とも白々しいですね。

佐・江

「えっ、えへへへ」

佐倉

「話題を変えましょう」

江川

「そうですね」

佐倉

「あの『BEE FREE!』っていうタイトルの意味っていうのはどういうものなんですか」

江川

「それはいろいろありますけどね、とりあえずは作品の随所にもりこまれてるんで、読んでいくうちにわかってもらえたらいいなーって思いますけど。要するにこの作品のテーマなんだぜい!(笑)」

佐倉

「なーるほど(笑)。笹綿がだんだん仲間はずれにされてって、伊福部とツーリングにいくでしょう。あそこで笹綿が悪口をいわれてることを「別にいいじゃないか、死ぬわけでもないし」ってサラリとかわすあたりなんか、僕はすごく気に入ってるんですよ。なるほどこういうところがタイトルにつながってるのかってね。捕われない心ってゆーか……」

江川

「まあそれもありますけどね。でもそれがすべてではないんですよ」

佐倉

「しかし、『B・F』のストーリーはつねに期待を裏切っていきますね」

江川

「あんまり読み手の思っている通りにすすんじゃうとおもしろくないでしょう。だから構図だけじゃなく、ストーリーのほうもつねに見たこともないような話をと……」

佐倉

「笹綿が虎子光と対決するところが最高でしたよ(単行本2巻)。『暗黒拳を受けてみよ!?』とかなんとかいって次のページでメタボロにやられてしまうという。一瞬ドギモを抜かれてしまいましたよ」

江川

「あれは普通なら笹綿のほうがやられちゃうんですけれど、てっとり早いほうがいいぜってんで……。ただ、あんまりあの方法を使っちゃうとそれもパターンになってくるし……。」

佐倉

「これからの展開はどうなっていくんですか?」

江川

「…………」

佐倉

「やっぱり笹綿も反撃していくんですか」

江川

「えへへへ、ところで『P・C』のスタッフですけど、なんでペンネームなんか使ってるんですか? なんか非常に残念ですね」

佐倉

「おっと、いきなり話題が変りましたね。まあ、あんまり大した意味はないんです。ほかでよくいってるんであんまりくわしくはいいませんけど。とにかく変な誤解をされるのがいやで、できあがるまではってことでペンネームを使ってたわけです。できちゃえば関係ないですから、どんどんいってますけどね。ペンネームだってアニメ誌をよく読んでる人だったら一発でわかっちゃうようなものだし。まあいろいろな関係で本当に名前を出せない人もいますけど、大半はわかりますよ。あんのさんとか渡辺さんなんかもろに名前出してるし、○○某とかいったってすぐわかっちゃいますからね。そういうことに興味がないんだったら別にわからなくたっていいわけだし、ある人だったらすぐにわかるわけ。要するにシャレですよ」

江川

「そうなんですか。ところであんのひであきって出てましたけどあれは『DAICON』とか巨神兵の庵野さんなんですか?」

佐倉

「そうです。あのスケベな庵野さんです」

江川

「そうなんですか。いやあ、僕『DAICON Ⅳ』のオープニングフィルムや『帰ってきたウルトラマン』みてすごいなあって思ってたんで、ぜひ会いたいんですよね」

あんの

「どーも、庵野です」

佐倉

「わっ、キサマどっからわいてでたんだ」

あんの

「いやあー、北久保さんが呼んでるような気がしたんで」

佐倉

「恐ろしい奴っちゃのう」

江川

「北久保さんっていうのは?」

佐倉

「いや、佐倉っていうのは実はペンネームで、本名は北久保弘之っていうんです。仮名が比久保弘之というわけです。」

あんの

「3つの顔を持つ男だ」

江川

「どうも初めまして江川です」

あんの

「あっどーも、よろしくお願します。」

江川

「いやあ、うれしいな。僕、あんのさんのファンなんですよ」

あんの

「どーもありがとうございます」

江川

「『DAICON Ⅳ』はすごいっ!」

あんの

「いやー、おはずかしい」

江川

「いやあ、そんなことないですよ。僕も作ったことがあるんでわかりますよ。大変だったでしょう」

あんの

「ええそうですね。ところで江川さんが作ったのってどういう作品なんですか」

江川

「いや、『きつね対たぬき』と『鬼の哭く谷』ていう作品なんですけどね」

あんの

「あっ知ってますよ。昔PAFで観ましたよ」

江川

「あっ、観たことありますか」

あんの

「いやあ、あれ観たあとこれ作った人はどうしたんだろうっていってたんですよね。あれだけ描ける人はちょっといないしー。どこかで先生やってんのかなーと思っていたから、まさかマンガ家になっているとは」

江川

「えへへへ」

あんの

「いつも『B・F』は楽しんで読ませてもらってます」

江川

「どうもありがとうございます」

あんの

「けっこういそがしいんですか?」

江川

「ちょうど昨日の朝仕事が終わったばかりでして……。今回は2日ばかり徹夜しました」

あんの

「けっこう早いほうなんですか?」

江川

「僕は手が遅いほうですよ。昔は雑に描いて速かったけど、プロになってからはなるべく読みやすいように丁寧に描くようにしてるから、おそくなってしまった」

佐倉

「背景なんかもかなり自分でやっているみたいですね」

江川

「ええ、仕上だけアシスタントにまかせてます。やっぱり描くのが好きですから。ただね、連載されてるのが週刊誌(隔週)でしょ。だからいくら細かく描きこんでも、印刷が良くないんであんまりみえないんですよ。単行本のほうは縮小されちゃうからつぶれちゃうし。そのへんが最近頭をなやませてるところなんです」

佐倉

「そりゃヒサンですね。『アキラ』みたいなサイズの単行本で出せればいいんじゃないですか」

江川

「いやー。それほどのものではありません。でもいいなー。あと困ってるのは時間が欲しいこと……。最近なんか妙に雑になっちゃって。もうちょっと人間のデッサンとか顔を描くのに力を入れたいと思ってるんですけど、背景も描かなきゃいけないし……。時間的な余裕がないんですよね。〆切の一週間前にネームができあがってないともう悲惨ですよ。もっともまだそんなこと一回もないけど」

あんの

「休む間もないんですね」

江川

「二週間に1日ですからね。悲惨でしょ」

佐倉

「いや僕らもたいして変わらないですよ。毎日休みのような生活してるわりには休みがないというね。う~ん謎だ(笑)」

あんの

「そうだねー。でも昨年は半年遊んでいたからー」

佐倉

「えっホントに?」

あんの

「うん、ホントに」

江川

「いいですねー。たくさん休みがあって……」

あんの

「昨年は劇場用の作品をやっていたんで、一本終わるとホケっとしていただけだったりして」

江川

「けっこうアニメーターって余裕あるんですね」

佐倉

「いや、あんのさんの場合は特別なんです。押井(守)さんも言ってますけどあんのさんは特殊な例だから引き合いに出すなって」

あんの

「そうかなあ?」

江川

「そうやって生活できるんですか」

あんの

「いや、だから普通の生活はしてませんから」

佐倉

「しょっちゅう、乞食とか浮浪者って呼ばれている(笑)」

あんの

「乞食アニメーター(笑)」

江川

「半年寝てくらすってゆうのはいいですねー」

あんの

「いいですよー(笑)」

江川

「あんのさんはマンガなんか描かないんですか?」

あんの

「うーん、マンガ家っていうのはどうしてもやれないんですよね。というのは週刊だったら週に一回、必ず締め切りがあるでしょう。あれがだめなんですよ」

江川

「そうなんですか」

あんの

「一回だけマンガを描いたことがあるんですけどそれでもうウンザリしました。〆切というのはいやですねえ」

江川

「マンガ界じゃあ〆切を守らないとほされますからね。たしかに余裕を持って描く絵は楽しいんだけど、時間がなくなったときに描くっていうのは苦痛だし描いててもいい絵はできないから」

あんの

「そういう絵は本になって自分の絵を見たとき嫌な感じしないですか?」

江川

「うっ、こいつは痛いっ」

あんの

「自分の絵を本で見たときにマンガはダメだなあと思ったんですよ」

江川

「嫌でもそれがプロですからね。やっぱりしかたないでしょう」

佐倉

「アニメーターだってあんまり変わらないんじゃないの?」

江川

「比較的に仕事のペースが選べるんじゃないですか?」

佐倉

「要するに責任をほかにまわせるというね。ただそれだけのことでしょう」

あんの

「あとはテレビでちょっと流れてすぐ終るし、マンガやイラストほど後に残らないから」

佐倉

「いや、そこから先は個人的な判断によるんじゃないかな」

あんの

「そうだね」

江川

「ところでまた話は変りますけど、『P・C』の続きっていうのはやらないんですか?」

佐倉

「いや、あれはもう一本きりってことでやりましたから、やっぱりあーゆうものは何本も作れるようなものじゃないでしょう。だから僕としては『P・C』っていうのはあくまで仕事としてやったわけで、別にやりたくてやったわけじゃないから」

江川

「でも、なにかやりたいものがあったらまた作って下さいよ。これからもがんばって欲しいですからね」

佐倉

「ありがとうございます。でもやりたいものっていうのがなかなかなくてだめなんですよね」

あんの

「でも『P・C』の前半のスケベな所が実にいいなと思ったけど」

江川

「本人は否定しているんだけど、実は内心やりたかったというのが出てしまったとか(笑)」

佐倉

「いや、仕事でやらなきゃいけないというのが決まってそれでやったから」

江川

「潜在意識の中であれがやりたかったというのがあるんじゃないですか」(突然、自分のことは棚にあげる江川氏)

佐倉

「そりゃ潜在意識の声を聞いてもらわないとわからない(笑)」(あくまでしらを切る佐倉氏)

あんの

「でも最初のころは興奮させるのが目的だっていってたじゃない」

佐倉

「それはビデオのニーズにあわせてやったことで、仕事のうちですよ」

あんの

「それでAパートの絵コンテができあがってきたでしょう。読んでみて、ああなるほどこういうふうに見せるのか、たかがロリコンものでここまでやるのかたいしたもんだと思ってね。中味がなんにもないのがよかったりして」

佐倉

「中味がないっていうのは最初から決まってたからね」

あんの

「だから中味がなにもなくって、見せたい部分だけおもてに出てるでしょう。なるほどこの方法でやるのかと思ったわけ」

江川

「この方法っていうのは?」

あんの

「だからどこかの裏ビデオみたいにいきなり出てきてやってるんじゃなく、最初にちょこっとドラマシーンを入れて、必要最低限の世界感だけ見せておいて、それであとは必要なもの以外はキャラクターもシーンもはぶいちゃって、いるものだけを押し出すっていうやりかた。あとドラマ性なんかも消してたりして」

佐倉

「ドラマ性も消さないとだめでしょう。もともとそういう話じゃないし……。僕の実力からいくとドラマ性を消さないとかなり苦しいから」

あんの

「う~~~ん、確かに。あれであの希薄な話にドラマ性をくっつけたら、もうグチャグチャしてしまうのではないかと。だから後半のほうはあれもやりたいこれもやりたいで、そっちの方向になっちゃって散満な印象だったりしてー」

佐倉

「というか、絵コンテ切る前に一番最初から最後までフイルムは自分の頭の中でできてたんだよね。それでよしってコンテを描き始めたんだけど、後半のカット数がかなり多くなっちゃったわけ。尺は後半のほうが短いんだけどね。だから本当はもっとカットが多かったんだけども、これ以上ふやしちゃうと原画マンの数が不足しちゃうんでやめたわけです」

あんの

「いや、あれは後半もっとやることを減らしたほうがよかったんじゃないかとー」

佐倉

「うーん、だから『P・C』っていうのは基本的にギャグものでしょう。外で戦ってるのに戦闘メカのコクピットの中でスケベしているというギャップがね……」

あんの

「生きませんでしたねー」

佐倉

「生きませんでしたねー(笑)」

あんの

「いやー、作品の質は最終的には監督の責任ですから」

佐倉

「もちろん」

江川

「厳しいですね監督も」

佐倉

「そりゃ厳しいですよ」

あんの

「まあ、作品が良くても悪くてもすべては監督に責任が帰ってくるわけ」

江川

「そうでしょうね。すべてそうなっちゃうでしょうから」

佐倉

「『P・C』に関して言っちゃえば、いいところは作画のおかげで悪いところは監督のせいです」

江川

「『P・C』はけっこうお金がかかってるって聞きましたけど、どうなんですか?」

佐倉

「いやー、同じシリーズの中で比べると倍ぐらいのものは出てますけど、業界の通常レベルからいくとそれ以下ですごく安いですよ」

あんの

「どこも低予算ですからね。ビデオ作ってるところは」

佐倉

「すでに相場みたいのができあがっちゃってるからね。どこも低予算なわけ」

江川

「でもテレビアニメの予算よりは数倍いいんでしょう」

佐倉

「うーん、そんなに出てないですよ。数倍なんて」

江川

「本当に? でもテレビでやってるアニメって非常に質が悪いのが多いでしょう」

佐倉

「ええ、でもそれはひと口に予算のせいとは言い切れない部分があるんですよね」

江川

「制作時間とかの問題もあるわけですか」

佐倉

「もちろんそれもあるし、ただそれでも言い切れないわけです」

江川

「スタッフとか……」

佐倉

「そうそう。そのほかにも、いろいろな問題が全部複合されたのが、テレビシリーズの質を落としているわけです」

江川

「いろいろ問題があるんですね。『P・C』を観て最初に思ったのが、こういうふうに作画なり演出がのびのびとやれるのはもうロリコンビデオしかないのかなあということなんですよね。それだったらロリコンビデオもいいじゃないかって思ったんですけどね。アマチュア感覚だけど」

佐倉

「そういう見方でロリコンビデオを観ちゃうと……」

江川

「良くないですかね」

佐倉

「スタッフの作品自体のとらえ方しだいだと思いますけど……」

江川

「むずかしいですね。私は映画人じゃないから良くわからないけれども……」

あんの

「とにかく、いまのアニメ業界というのは腐ってますから」

江川

「そうなんでしょうね。なんとかして下さいよ、若い力で」

あんの

「いやあ、アニメ界の転覆をたくらんでたりして」

江川

「下克上の世界か。そいつは面白いっ」

佐倉

「僕は転覆は考えてないけどね」

あんの

「いや、どこか一つでも前例ができればいいんですよ」

佐倉

「まあ、影ながら応援しますから」

あんの

「一緒にやらない?」

佐倉

「そーですねえ、考えさせていただきます」

江川

「お2人ともこれからどんな仕事があるんですか?」

佐倉

「いろいろありまして(笑)。あんのさん聞いたら怒るだろうな」

あんの

「どうして?」

江川

「あんのさんはなにかあるんですか?」

あんの

「いや、これからはしばらく放浪の旅に出ようと思ってるんです。ちょっと原付でほヶーっと日本海でも見てこようかと……。それが終ったらちょっと仕事が入ってるんですけど」

江川

「それはいいですね」

佐倉

「ところで江川さん、アニメのほうはもうやらないんですか?」

江川

「いや、いつかまたやりたいんですけどね。いまのところは漫画のほうに熱中していたいもんですから」

あんの

「アニメーターやりませんか?(笑)」

江川

「いやあそれはちょっと(笑)。僕は人の絵を描くっていうのがダメなんですよね。やっぱり描くなら自分のキャラクターでやりたいし。だから、いつかアニメをやるとしても自分で絵コンテから作画までやりたいと思ってるんですよ。5分~10分ぐらいでね。」

佐倉

「でも、アニメの場合一人でやるっていうのは大変ですよ」

江川

「そうなんですよね。だから、信頼できるスタッフが集められるなら、レイアウトぐらいまではやってあとはまかせて……。佐倉さんならお願いしたいなあ」

佐倉

「へへーっ、どうもありがとうございます。光栄の行ったり来たりです。でも本当にいつかやってみたいですね」

江川

「そうですね。ですから、僕が将来人気漫画家になって印税で大もうけしたら(笑)自分でスポンサーになってアニメを一本作ってみたいと思ってるんですが……。どーでしょうーねー」

佐倉

「そりゃいいですね。そのときはぜひ声をかけて下さいよ」

江川

「そのときまで、おたがい生き残ってるといいんですけどね(笑)」

あんの

「そりゃ恐しい」

江川

「まあ、そんなことのないようにがんばりましょう」

佐倉

「そうですね」

あんの

「ヒマになったらスタジオのほうにも遊びに来てください」

江川

「ありがとうございます」

佐倉

「あ、うちのスタジオにもぜひきて下さい」

江川

「ええ、ヒマになったら遊びに寄らせてもらいます」

佐倉

「ところでお願いが……」

江川

「はい、なんでしょう」

佐倉

「サインもらえますか?(笑)」

あんの

「僕もお願いします(笑)」

この対談は4月1日と4月11日の2日にわたって行われたものを編集、構成しなおしたものです。

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  1. あいうえお (2008年07月23日 14時29分)

    江川シネヨ

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