夏休みアニメ電撃大作戦! トップ対談: 序破急

庵野秀明や貞本義行の発言集、作品に関連する資料など

“アニメージュだからできる最強のアニメ講座”という特集の初めに掲載された対談。

夏休みアニメ電撃大作戦! トップ対談
月刊アニメージュ 1991年9月号 より

島本和彦×庵野秀明

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いいものはたくさんある。みんなもっと作品を見る目をやしなおう

―特集のトップを飾るのは、アニメファンとしても一家言を持つご両人の登場だ。おふたりのためになるお話とは!?

AM

「島本さんは、アシスタントの若い人などとアニメの話をしてて、ジェネレーションギャップを感じることなどありますか。」

島本

「もう、わたくしは感じまくっていますよ(笑)。」

AM

「庵野さんは若いアニメファンと話す機会などありますか。」

庵野

「いえ、あまりないです。」

島本

「ただ単に美少女がでてくるだけとしか思えない作品ばかりをアシスタントが見て喜んでいると「おっと、こいつは!」と思っちゃいます。アシスタントはこれからマンガ家になっていく人間だから、いいものをいろいろ見て影響をうけてほしんですよ。」

庵野

「いいものを知らないといいものは作れないからね。今回の特集は中高生に見てもらいたいアニメ作品ということですけど、中学生くらいの年齢って、いちばん感受性が豊かで、なんでもとりこめる時期だから、見るものは選んだほうがいいと思いますよ。」

島本

「いいものばかりが選べればいいんだけどね。」

庵野

「イベントや劇場でフィルムを流したときの若い人たちの反応をみていると、つまらない作品のつまらないところで笑ったりするんですよ。「こんなのでいいの?」って思いますけどね。」

AM

「もっとアニメファンに作品を見る目をやしなってほしいということですか。」

島本

「ですね。でも最近は―――。」

庵野

「最近は、作品の量や情報量が多すぎて、選びきれないんじゃないかな。」

島本

「そうだね。わたしもなにを見ればいいのかわからなくなることありますから。」

庵野

「世の中はもっと広いんだよっていってやりたいですね。ほんとうにいいものはあるんだから、もっと広く目をむけましょう。アニメにかぎらず、小説にしろ、マンガにしろ、映画にしろ、いいものはたくさんあるんですから。」

魂がこもった作品はどこかがちがう

AM

「おふたりが中高生におすすめする作品というのはどんなものでしょうか。」

島本

「やっぱり「宇宙戦艦ヤマト」('74年・テレビ)はハズせませんね。「ヤマト」は魂がこもっていますから!」

庵野

「「ヤマト」にしろ「機動戦士ガンダム」('79年・テレビ)にしろ、魂のこもった作品は、画面から作り手の心の叫びが光線になって出てきますからね。チンタラ作っている作品は、画面からチンタラ光線がでていますから、見ていてつらくなっちゃいますね。作り手が作品にどのくらいの魂をこめているのかって、その作品を見るうえでのバロメーターになりますよね。」

島本

「そういうのって、けっこう感じちゃいますよね。作り手が思いをこめている作品って、物語や絵の良し悪しとは関係なく、キャラクターのちょっとしたしぐさだけでも感動してしまう。」

庵野

「フィルムが心の琴線に触れるのはそういうときなんだよね。」

島本

「「ヤマト」に関しては映画や編集版を見て、見たつもりになっていちゃあいけない! 最初のテレビシリーズを見なくちゃだめ。あの波動砲の威力の凄さは、テレビシリーズでしか感じられませんからね! 26話を順に見ると、ヤマトが旅した14万8千光年の長さに感動します。」

庵野

「「ヤマト」は作画なども当時としては高水準な作品だったんですけれど、古い作品ですからね。画面に関してはいまの中高生は目が肥えているはずですから、そのあたりはちょっとつらいかもしれない。でもいちどは見ておいてほしいですね。」

やっぱりこれだけは見ておいてほしいな

AM

「ほかに若いアニメファンにおすすめの作品はありますか。」

島本

「わたしは劇場版「銀河鉄道999」('79年)を劇映画のなかでの最高傑作だと信じているんだけど。」

庵野

「ぼくは、あれはダメだった。もっと短くまとめてくれればよかったんだけど。」

島本

「そうか。クライマックスでメーテル星が爆発するなかで、鉄郎がメーテルの手をひっるシーンなんか、バ~~~ッとトリハダがたつほどよかった。「オレもこんなシーンを描くためにマンガを描くんだ!」と思ったよ。」

庵野

「たしかに、あれはいい映画だと思う。」

島本

「それから「巨人の星」('68年・テレビ)と「あしたのジョー」('70年・テレビ)は見ないと人生損する! 一生の不覚ですよ。」

AM

「「巨人の星」は花形満が大リーグボール1号を打つところ(第21巻)までしかビデオがでていないんですよね。」

島本

「あの回はトリハダたつわ、涙ボロボロでるわで、もうつづきが見たくて見たくて。」

庵野

「レンタル屋さんもそんなに置いてくれないだろうから。つづきをだすのはむずかしいでしょうね。」

島本

「だまされたと思って「巨人の星」は借りて見ましょう。疑う人はまず、第21巻を見るといい。そうすればきっと全話見たくなります。それからこの前、レンタルしてみて気がついたんだけど「ルパン三世 マモー編」('78年・劇場)って、ビデオだとカット版なんだね。90分になってる。」

庵野

「そりゃあ、短い(オリジナルは100分。ちなみにLDはノーカット版で出ている)。「マモー編」はすきなんだけどな。いちばんルパンらしいし。」

島本

「不二子もかっこいい。」

庵野

「宮崎(駿)さんの「ルパン三世」もいいけど、宮崎さんの不二子には色気がないから。」

島本

「「マモー編」は絵もいいよね。ああいうキレ味の鋭いというか、デフォルメされててアダルトなふんい気をもつ絵というのはしびれますね。」

庵野

「ラストに三波春夫の「ルパン音頭」がかかるのもいい。」

島本

「いい! あれはいいっ!! あれだけ緊迫した内容で最後に「ルパン音頭」がかかる乱暴さには舞い上がってしまう!」

庵野

「あとは「機動戦士ガンダム」の第1シリーズ('79年・テレビ)も見てもらいたいんだけど。あれはビデオソフトにもなっていないんだよね。」

島本

「でも、最初の「ガンダム」の映画もいいですよ。」

庵野

「映画なら3本めの「めぐりあい宇宙編」が絵がきれいでいいですよ。それから富野(由悠季)さんの作品なら「伝説巨神イデオン」('80年・テレビ)もおすすめです。テレビシリーズをバ~~~っと見て、「発動篇」('82年・映画)を見るのがベストですね。ちょっと絵がよくないところもありますが、ガマンして見てください。」

島本

「タツノコの作品だったら「科学忍者隊ガッチャマン」('72年)、「新造人間キャシャーン」('73年)、「破裏拳ポリマー」('74年いずれもテレビ)がいいかな。」

庵野

「あの一連の作品は、当時はつきぬけたものがあったけれど、いま見るとつらいのじゃないかな。出崎(統)さんの作品はいま見てもいいと思うんだけど。「宝島」('78年・テレビ)とかいいですよね。」

島本

「うん。出崎・杉野コンビはいい!」

庵野

「最終回とか、かっこいいしね。出崎さんの作品にはダンディズムってものがあるし。」

島本

「出崎さんはすごく「人間」を描いているよね。この人物はこういう人生を歩んできた人間だよっていうことがしっかり描かれているんだよね。」

庵野

「「エースをねらえ! ファイナルステージ」('89年・OVA)もよかったですよ。1話を見はじめたらもうとまらなかった。」

島本

「ぼくは「ファイナルステージ」は途中までしか見てないんだけど、ラストは納得できるものでした?」

庵野

「ちょっとあっさりしてますけれど、納得できますよ。もう、全編に流れるオトナのムードに圧倒されてしまいました。あのムードはまだまだ、ぼくにはだせません。その後に自分が作った「ふしぎの海のナディア」を見たら、なんてガキのアニメなんだろうってつらくなりました(笑)。」

スタッフ名は作品選びのポイント

AM

「なにか作品を見るうえでのポイントなどありますか。」

島本

「監督で見ていくのもおもしろいかもしれない。たとえば出崎統という人はどんな作品を作ってきたんだろうって、系統だてて見てみるのもおもしろいんじゃないかなあ。」

庵野

「そうだね。ぼくはアニメにかぎらずマンガでも映画でも、ひとりの人を気にいるとその人の作品を全部見ないと気がすまない方なんです。富野さんの作品も出崎さんの作品もそうやっておいかけて見ましたよ。」

島本

「逆に気に入らない作品を見ちゃうと、次からそれを作った人の作品は見なくなっちゃうってこともあるなあ。」

庵野

「アニメの制作は集団作業だし、スポンサーの意向などもあるから、スタッフの実力と作品の質が常にイコールではないんだけど、ある程度スタッフの名まえをおぼえておくのはいいことだよね。気に入った作品にいつも同じ人が参加してたって気づくこともあるし。」

AM

「そういうことを手がかりにして、作品を見る目をやしなってほしいということですね。」

島本

「ただ、こうやって話をしているぼくたちだって、はたして作品を見る目があるかどうかってわからないけど。」

庵野

「うん、わかんないね。」

島本

「とくに最近は理解できないものがウケたりするんで、ものすごく不安になったりしちゃう。
結局はすききらいの問題になるわけだし。」

庵野

「最終的にその作品のよさを決めるのは、その人の感性ですから。アニメにかぎらず、いろんないいものを見るようにして、感性をみがいてほしいですね。」

島本さんが選ぶノンセクション・アニメベスト10

  1. 宇宙戦艦ヤマト(TV・'74年)
  2. 巨人の星(TV・'68年)
  3. (旧)あしたのジョー(TV・'70年)
  4. 宝島(TV・'78年)
  5. 赤毛のアン(TV・'79年)
  6. TVヒーロー主題歌全集
  7. (旧)ルパン三世(TV・'71年)
  8. エースをねらえ!(劇場版・'79年)
  9. 未来少年コナン(TV・'78年)
  10. 銀河鉄道999(劇場・'79年)

「「ヤマト」と「巨人の星」と「ジョー」は基本中の基本で、体調、精神状態が悪くなったり、創作意欲を失ったときに必ず見ています。「宝島」と「赤毛のアン」と「コナン」は、もし知らない人がいたら、一度は見ておいたほうが死ぬときに後悔しないと思います。」

庵野さんが選ぶノンセクション・アニメベスト10

  1. 宇宙戦艦ヤマト(TV・'74年)
  2. 機動戦士ガンダム(TV・'79年)
  3. 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(劇場・'88年)
  4. 伝説巨神イデオン(TV&劇場・'80年)
  5. どうぶつ宝島(劇場・'71年)
  6. ファイトだ!! ピュー太(TV・'68年)
  7. 未来少年コナン('78年)
  8. (旧)エースをねらえ!(TV・'73年)
  9. トムとジェリー('44年~)
  10. 赤毛のアン(TV・'79年)

「中・高生におすすめするというよりも、自分のシュミで選びました。とくにいま「ファイトだ!! ピュー太」にしびれてます。わたしは最近、これを見て目からウロコが3枚くらいおちました。「ピュー太」と「ピュンピュン丸」と「トムとジェリー」は全話LDだしてほしいですね。」

  • 投稿者: Haimu
  • 2007年07月27日 16:05

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