『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』をはじめとした庵野秀明作品のファンサイト
伊藤郁子×佐藤順一×幾原邦彦×庵野秀明×熊田雄次
庵野氏が主宰するサークル「ハッピー興行新社」発行の同人誌より、アニメーター・長谷川眞也氏についての座談会。
- 庵野
長谷川君の話をはじめましょう。まず、九七話で長谷川君が描いた亜美ちゃんの“乳ユラシ”を、何故、佐藤さんは演出チェックで、無くしたのかということについてから。
- 熊田
いきなりですね(笑)。
- 佐藤
私が“乳ユラシ”を無くしたのは、ドブリンです(笑)。
- 伊藤
ああ、亜美ちゃんじゃないんですか?
- 佐藤
ドブリンです。まさか、いくらなんでもドブリンではやらんだろうと思っていたけど、(笑)。あのキャラで揺れてもちっともドキドキしないと思うんですけど。でもしっかり「ボヨヨン」と(胸の揺れた原画を長谷川君が描いてきた)。
- 幾原
(笑)。
- 伊藤
亜美ちゃんの回では、長谷川さんのカットは、わざわざ亜美ちゃんの股(の間)から構図をとっているところが凄いですよね
- 佐藤
そう、わざわざ股の間から(カメラが撮るというアングルになっている)。
- 庵野
見事に絵コンテの構図を変えていましたね。
- 佐藤
甘くみていましたね。
- 伊藤
「ついに、きた~~」って感じで!
- 佐藤
「もう、これしかないんだな」って感じで(笑)。
- 伊藤
佐藤さんはレイアウトチェックで「うわ~~っ……OK!」とかって書いている。
- 庵野
佐藤順一をもってしても押さえきれなかった、あのリビドーってやつですね。
- 佐藤
油断のならない人ですね。
- 伊藤
油断してましたか?
- 佐藤
油断しましたね(笑)。はっきり言って。
- 庵野
筋金入りのオタクですからね。あの若さで筋金入りだから、もう、かなわない。
- 佐藤
いくつなの?
- 伊藤
25か、26? ………今年、26歳かな?
- 幾原
『セーラー』に入る時から、かなり前評判が高かったんです。年のわりに、物凄く上手いっていう前評判があったからね。珍しいっていうかね、まあ、昔は珍しくなかったのかもしれないけれど。あの年で、ああいうムードをもった絵が描けるっていうのは珍しいよね。最近、ああいうふうに自分を押してくるアニメーターってあまりいないよね。
僕らの世代と通じるところがあるっていうのかな。持っているムードが。- 伊藤
目覚めるのが早かったんでしょう。うちらと同じくらいの時に目覚めていたんでしょう。
- 幾原
(笑)。
- 伊藤
だから、同じような感覚でできるのかなァ。
- 庵野
そうですね。中学の時からコミケの常連だったっていうから。
- 佐藤
常連っ! ……もう、私などのでる幕ではないですねェ(笑)。
- 熊田
この中で、一番、長谷川さんとのおつきあいが長いのは……。
- 幾原
伊藤さんかな?
- 伊藤
最初に、一緒に仕事をしたのは31話だけど、その前に無理やりお友達になったんです。
- 熊田
伊藤さんから?
- 伊藤
ええ。長谷川眞也という人の噂はきいていたけど、こんな近いところにいるのに全然話をする機会がなかったから「これは無理やりお友達になるしか無い!」と思って、夜中に話しかけました。
- 熊田
夜中に! ドキドキするシチュエーションですね。
- 一同
(笑)。
- 伊藤
長谷川さんは怖い、怖いっていう話を聞いていたけれど、ちっとも怖くなかったですよ。
- 熊田
人柄は怖くないけど、ルックスが怖い(笑)。
- 佐藤
目付きが怖い(笑)。
- 伊藤
私は怖いと思ったことないですよ。
- 庵野
長谷川君と街で肩がぶつかったら「ごめんなさい」ってあやまっちゃいますよね。
- 熊田
怒らせるとマズイと思うよね。
- 庵野
うん。
- 伊藤
なんか、彼って中学生みたいじゃないですか。
- 熊田
ああっ、おねーさんはそう思うわけですね。
- 伊藤
うん、そういうところはあるかもしれないね。
- 幾原
長谷川君はあんまり怒らないよね。グチはいうけど。
- 伊藤
長谷川さんは“怒るツボ”があるんですよ。そこに触れると怒るという。
- 佐藤
(心配)なんだろう、それ。
- 庵野
起爆スイッチがあるわけですね。
- 伊藤
あるんですね。そこに触れるとドカンと。
- 佐藤
(心配)具体的に聞いておいたほうがいいかな……。
- 伊藤
(笑)佐藤さんが聞くことないでしょう! ドカーンとくるんだけど、立ち直りも早い。そこが彼の人間性の素晴らしいところですね。常に前向きにズンズンつき進む。脇目もふらず(笑)。
- 熊田
伊藤さん、お友達になってみてどうした?
- 伊藤
……ファンになりました。大好きですよ。ああいうタイプ。
- 熊田
人間として。
- 伊藤
ええ。「これは、いい人と会えたな」って。何か刺激的でしょ。やることなすこと。
- 佐藤
(長谷川さんとの)飲みくらべの決着はついたんですか?
- 伊藤
ええ、わたしが勝ちました。でも、やっぱり(酔った後の)立ち直りは、長谷川さんの方が早かった。
- 熊田
もう、少しアニメーターとしての長谷川さんの話を……。
- 佐藤
あまりそういう(エッチに描けそうな)カットは渡すべきじゃないのかな。
- 伊藤
もっと渡すべきですよ。
- 佐藤
108話の原画だと思うけれど、長谷川君は、みちるの胸がグッと持ち上げられている原画を描いていたな。スタッフルームで原画チェックをしている五十嵐が「うお~~~っ!」って、声をあげるから何をしているのかと思って見ると、胸が持ち上げられてる(笑)。………みちるなのに!
- 一同
(笑)。
- 伊藤
みちるは胸、でっかいですからね。
- 佐藤
多少は押さえるかなと思ったんだけど。
- 庵野
確かに、油断のならん人ですね。
- 佐藤
あなどれないよね。「みちるに、こんなことをさせては……」という判断は、彼に無い!
- 一同
(爆笑)。
- 佐藤
「胸があるんだから、なるだろう。しちゃえ!」って。
- 伊藤
彼にとってはナチュラルな仕事なんですよね。
- 佐藤
自然にやってるんだよね。
- 幾原
「ならなきゃおかしいだろう」って。
- 佐藤
そこまで確信してやっているかどうかはわからないけれど。手が勝手に描いているのかもしれない。……本能にまかせて描いているのかもしれない。
- 幾原
(笑)。
- 伊藤
それは危ない発言ですよ。
- 庵野
でも、リビドーにまかせて描いてる感じはありますよね。
- 佐藤
そういうニュアンスは多分にあるよね。さながら、王蟲が子供を殺されて目が赤くなって我を忘れているような……。
- 一同
(爆笑)。
- 佐藤
ああいう(エッチに描けそうな)カットをもらった時の長谷川君は、もう目が赤くなっているような感じがするよね。
- 幾原
長谷川君を押さえようとした佐藤さんは、王蟲の前に立ったナウシカみたいにドーン! と弾かれる。
- 一同
(笑)。
- 佐藤
ああっ! そういえば、長谷川君を押さえた記憶があるな。レイちゃんの変身シーンだ。シルエットのところで、胸の乳頭がプクっと飛び出しているのがわかるように描いてあったんだ。
- 幾原
(笑)。
- 佐藤
「これはやめて欲しいんですけど」って言った覚えがある。
- 伊藤
そういえば「消されちゃった」って、残念そうに言ってた。
- 庵野
(うなづいて)思えば、当時に押さえたのはナイスな判断でしたね。
- 佐藤
あの時に押さえて、今の状態ですからね。あの時にやらせておいたら……。
- 伊藤
今頃はどうなっていたか、わからないですね。
- 一同
(軽く笑)
- 佐藤
長谷川君は好きなキャラとか、あるのかね。
- 幾原
描きやすいのはレイちゃんじゃないかな。この前のトデーンの回は、絵は今までの長谷川君の中でいちばんよかったね。彼は吸収力が早いね。自分に無駄なところをみつけると、次には克服するんだよね。「R」で最初に作画監督やった時に、レイアウトの取り方でずいぶんわかんないみたいでしんどかったみたいだけど、すぐにこなせるようになったみたいだし。
- 佐藤
底力があるのかな。
- 幾原
探求心が強いのかもしれない。いろんなものを見て勉強しているみたいだし。
- 熊田
幾原さん、いちばん喋ってないよ。もっと喋って。
- 幾原
もっと?
- 庵野
本ができた時に「ああ、幾原さんがボクのことをこんなに!」と長谷川君がジワ~となるようなことを。
- 熊田
「長谷川君がいなければ『セーラームーン』はもう、ガタガタです」とかさ。
- 幾原
もう、ガタガタです(笑)。
1994 7/7 大泉学園にて
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