最前線でガイナックスを見た: 序破急

庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載

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ニュータイプドットコム 2002年5月号 より
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亡きニュータイプドットコムに掲載されたインタビュー。

ほぼ同時期に実写とアニメを制作 庵野秀明の狙いは?

―「アニメ店長」と「流星課長」。ほぼ同時期に短編とはいえ、アニメと実写を手がけた庵野。そこに意図はあったのだろうか。

庵野

「実は長編を1本準備していて、その合間にオファーがあった短いものだけやらせていただいたんです。『アニメ店長』では“現場にいる今石”のプロデュースが第1目的で、それはうまくいったと思います。作品の手柄はすべて彼にあると思っています。『流星課長』は5日間ぐらいで撮影したんですが、『ラブ & ポップ』のときよりも技術ではなく、無駄を省くという点で経験値が上がったように思います。あとは、松尾さんをキャスティングできたことが大きかったです。僕の場合、はじめに企画、次にスタッフありきなんです。この2つがそろわなければその企画はあきらめます。これはアニメでも実写でも同じです」

―たとえば、固定メンバーで、脚本家をつけて行う劇団公演と、違うプロデューサーが、毎回違うスタッフ・キャストで行うプロデュース公演を引き合いに出し、自分は後者だという。

ただそれらを実践するには、吸引力がなくてはならない。庵野のもとにたくさんの人材が集まる理由はどこにあるのだろうか?

庵野

「実際には、いっしょにやってくれるスタッフは減っているように思います。僕がやりたいと思っているスタッフは減っているわけではないんですけどね。

ともかく僕の周りにいる人は、『庵野がつくるからおもしろそう』といって来てくれる人だと思うんです。

それゆえに、つまらないものをつくってしまって、僕から人が離れていってしまうことが、あえていえば恐怖というか、緊張感ではありますね」

―実写とアニメをつくることによって、もう一方に何かプラスになるものはあるのだろうか?

庵野

「実写には実写だけに、アニメにはアニメだけにしかできないことがあると思います。ただはっきりは言えないけど、プラスになっている“目に見えない何か”があるような気はしますね」

庵野秀明にとってのガイナックスという居場所

―会社は作品を転がすための箱。そう庵野は言う。時にガイナックスを飛び出し、誰の目にも明らかに活躍の場を広げる映像作家は、ガイナックスという場所をどう考えているのだろうか?

庵野

「たとえば、あと少しお金を使ったら会社がつぶれる。けれどいい作品になる。そうなったら僕は会社と作品なら作品をとります。いっしょにいる人に愛情はありますが、会社には愛情はないんです。僕にとってガイナックスは作品をつくることを最大の目的とする場所です。そういう点ではガイナックスは、珍しい会社なんじゃないでしょうか。システムも細かくないし、やりたいものだけをやらせてくれる。作品をつくるだけの組織として成立しているから、居心地がいい。作品至上主義の人が集まっている場所。そうじゃなかったらとっくに辞めてるでしょうね」

―上京してきたころはアパートも借りず、会社に寝泊りしていたという。

庵野

「現場が好きなんです。作品をつくっているときは、これ以上働いたら死んじゃう……とかいったブレーキはありませんでした。『エヴァ』のTVの後半のころは脳内麻薬が出まくってました。40年生きてきて1度だけですね、あんなのは。ただあれをもう一度とは思わないし、できるかもわかりません」

―ただ20年以上やってきたから、フィルムが完成したということでは喜べなくなっているという。「快楽にも耐性ができてきますから」、そういう庵野の実写への傾倒は、そちらで得られる快楽のほうが大きいからなのか?

庵野

「最近、一生の残り時間であといくつ作品をつくれるだろう? と考えたときに、実写のほうが断然たくさんつくれると思ったんです。アニメだと1本かかわると長いですから」

実写、アニメ、庵野秀明はどこへ向かうのか?

―いまこのページを読んでいる読者には、当然実写以上に次作のアニメが気になるところだろう。

庵野

「僕は映像には実写とアニメの2つしかないと思っています。これらはぜったいひとつにはならない。でもすべては方法論にすぎないんです。たとえば『ラブ&ポップ』は実写しか考えられなかったでしょうし、『流星課長』なら、20年前だったらアニメでやったほうがよかったと思う。つまりどちらが自分がやりたい作品をつくるのに向いているのか? ということだけです。

ただ、いまはガイナックスが2年先までスケジュールが埋まってしまっているので、実写の長編を準備しているんですよ」

―庵野にとってはつくりたいものがすべてである。そして実写であろうと、アニメであろうとそれらの作品をつくることが“見えない何か=経験値”を蓄積していく。ガイナックスという絶対場 = アニメに、その経験値を持ち込む日を楽しみにしていたい。

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