キューティーハニー映画化記念スペシャル対談: 序破急

庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載

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週刊モーニング 2004年No.25 より

永井豪×庵野秀明

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―本誌連載が大好評の伝奇アクション「天空之狗」。その作者、永井豪先生のヒット作のひとつ『キューティーハニー』が、庵野秀明監督によって映画化された。今回は、公開を前に両氏に映画と漫画の魅力について語っていただいた。

サトエリさんのハニーはマンガ的でピッタリ

永井

「撮影現場には2度、お伺いしましたけど、スタッフのみなさん、和気あいあいとしていい雰囲気でしたね。」

庵野

「楽しい作品だと、撮影現場も楽しくなりますね。内容が重くて辛気くさいと、現場も重くなります。」

永井

「ボクはアニメも好きですが、実写も好き。だから『キューティーハニー』が実写になって嬉しいですね。マンガを描くとき、登場人物は生身の人間だと思っていますから。」

庵野

「ハニー役に佐藤江梨子さんを起用したとき、実はボク、佐藤さんを知らなかったんです(笑)。ほかの人の推薦だったんですけど。秋夏子役の市川実日子さんは、雑誌の表紙を見ていて知っていましたが。だから「もっと俳優さんの勉強をしろ」と言われるんですよ。」

永井

「サトエリさんのハニーは日常生活が描かれてていいですね。敵と戦っていないときは、生活がある。一生懸命おにぎりを食べていたり。」

庵野

「サトエリさんは、キャラクター的にマンガ的なところがあるんですよ。表情もマンガ的だし。」

永井

「マンガのキャラクターを実写にするとき、ファンはそれぞれのキャラクターについて自分のなかでイメージを作っていますから、難しい面もある。10人の読者がいれば、10人ともイメージが違う。そのなかで佐藤江梨子さんは、絶対にはまるとは言わないまでも、最大公約数に支持されると思います。」

お色気もあり、ギャグもシリアスもある作品

庵野

「原作では女子高生だったハニーをOLという設定にしたのは、大人にも観てもらいたいからです。女子高生では子供過ぎて、大人は観てくれませんから。」

永井

「女の子同士の友情がよく描かれていますね。女刑事の秋夏子と心を通わせる部分がよかった。夕張映画祭でも、女性ファンが「ハニーの孤独感が出ていて、泣いちゃいました」って言ってましたね。」

庵野

「ボクが原作の『キューティーハニー』を読んでいたのは中学生のときでした。永井先生の作品は、小学生のころから読んでいて『ハレンチ学園』もリアルタイムでした。」

永井

「当時、ボクは連載を5本くらい抱えていて、本当は『キューティーハニー』をやる余裕はなかった。テレビで企画が持ち上がって、「週刊誌で連載するならアニメ化します」とテレビプロデューサーが言うわけ。「じゃ、やろう!」と、それで連載が決まった。」

庵野

「永井先生の作品は、映画にしやすいと思っていました。幅の広さ、世界観の広さは凄い。お色気もある、ギャグもある、シリアスもある。何より、展開がめまぐるしかったですよ。秋夏子が殺された次の週でハニーが風呂で裸になっているという(笑)「なんだ、これは!」という感覚でしたよ。」

永井

「評論家の阿部進さんが言っていたんだけど、ボクのマンガはページをめくったとき、全く予想が当たらない。「こうなるだろう」と思ってページをめくると、ぜんぜん違っているとか。これは奇をてらっているわけじゃなく、自然にそうなっているんですけどね。」

庵野

「ボクも先生のマンガを読んだおかげでこんな人間になりました。ありがたいことです(笑)。」

永井

「今度は庵野さんの映画を観て育った人間が出てくるわけだ(笑)。」

庵野

「申し訳ない、今から謝っておきます(笑)。」

子供向けではなく、大人に向けた映画

永井

「庵野さんの『新世紀エヴァンゲリオン』も観ていました。猫背でどちらかというとデビルマン的な陰の要素を含んだロボット。「こういうのもありだったなぁ」と率直に思いました。ボクが『マジンガーZ』をやったときは、子どもに理解できなければならないというので、年齢層が高い作品はできなかったという制限がありましたね。」

庵野

「エヴァンゲリオンにもマジンガーZの要素は入っているんです。顔の赤いラインは、マジンガーZから来ています。」

永井

「いまは大人になったアニメファンが多いから、いろいろできますよね。」

庵野

「分かるところだけ分かってもらえばいい、子どもは全部分からなくてもいい、分からないところは後で分かってくれ、という考え方です。」

永井

「それをできる環境があればよかった。昔はテレビ局側からNGでしたから。」

庵野

「表現できる幅が広がってきましたね。それで言うとCGの進歩も大きい。でも、猫も杓子もCGという風潮がありますが、頼りすぎもいけないと思います。今回の『キューティーハニー』は、冒頭の海ほたるにパトカーが集結しているシーンなどはCGを使っていますが、CGでないと表現できないところだけ使うようにしました。」

永井

「マンガでも、CGを使いすぎると作家の個性がなくなりますね。」

庵野

「たとえば水の動きにしても、このアニメーターが描けば、こんな波になる、というのがありますが、CGだとどれも同じに見えてしまいますね。」

悪役はうちの奥さんがデザインしました

永井

「描かれているキャラクターもマンガ的でいいですね。ハリウッド映画にあるようなないような“芸者ガール”が出てきたり。」

庵野

「スカーレット・クローはうちの奥さん(本誌にて『働きマン』連載中の安野モヨコ氏)がデザインしたんです。奥さん、着物が好きなので(笑)。そういえば豪先生にもワン・シーン登場していただきました。台本は何回も書き直しましたが、そのシーンだけは最初からあって、これだけは残そうと(笑)。セリフはできるだけ短くしましたが。」

永井

「ありがとうございます(笑)。続編も観てみたいところです。」

『天空之狗』の今後も予測不可能

庵野

「豪先生も、『天空之狗』の連載を始められ読ませていただきましたが、おもしろいですね。」

永井

「この作品も世界観が広がっていく作品だと思っています。宇宙からやってきた天狗の仲間たちは現在の天空社だけなのか、世界中にもっといるとしたらどういうことになってくるのか。場合によっては、次から次へと新しいキャラクターが登場して、現在の狗井新平から主役の座が他の魅力的な人物に替わっていくかもしれない。自分でもどう展開するか予測がつきませんね。」

庵野

「先行きがどうなるかまるで予測がつかない。楽しみにしています。」

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