2000年のカリスマたちを探せ!!: 序破急

庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載

ページ情報
月刊アニメージュ 2000年2月号 より

鶴巻和哉×貞本義行

タグ
貞本

やっぱり描いていて楽しいのは、ハル子であったり、マミ美であったり。まだ他にも登場する女の子だったりするんだよねぇ。

鶴巻

僕と貞本さんの女子の見方ってちょっと違いますよね。僕はヒロスエや優香が好きだケド、彼女たちの写真ならなんでもいいんじゃなくて、要らない写真は要らない。

貞本

そこがちょっと違うところだね。アイドルマニアとして(笑)。僕は全部集めたい。イケてない写真もイケてない部分として楽しみたいね。

鶴巻

たとえば今、前田亜季が好きだとして、僕は前田亜季の“顔(ルックス)”が好きなんだけど、貞本さんは“前田亜季”自身が好きなんだよ。

貞本

マッキーは彼女に対して「ご飯を作ってくれたり、なでなでしてくれたりする君は好きだけど、それ以外の君は認めない。改めたまえ」って絶対言うタイプだね(笑)。

鶴巻

いや、そんなことないですよぉ~(笑)。たとえば吉野紗香がタバコを吸ってても、彼氏がいてもいやじゃないもん。って優香(ゆーか)…いやなところが良いわけ。アニメでも、単にパンチラやシャワーシーンがあるよりは、かわいい女の子のヤな部分が描いてあるほうにムフフとなるのでぇ。

貞本

(笑)。そういうのって現実でもいくらでもあるじゃない。でも、アニメの絵で表現するのってかなり難しいよ。俺、今限界感じてる。ああいうアニメの線で、現実の女の子に近づけていくことに。もうあとは、演出とか脚本にがんばってもらうしかない。前からそうだけど、デザインするときは、シチュエーション込みだよね。こういうセリフを言うんだとか、包帯グルグル巻きで、ぼそぼそしゃべるとか、監督に絵ヅラ以外のものを逆リクエストする。

鶴巻

レイは、当初はストライクコースじゃなかったでしょ? 本来はフツーの明るい子が良いって言われるはずだったのに。

貞本

レイはアスカに対するカウンターだったからまだわかる。ハル子は難しいよね。でも、俺が考えてる以上にマッキーは考えているから、それは形にしてあげようと思ったけど。今回僕は職人的な立場で、マッキーの描いたラフを元にまとめた。

鶴巻

でも、僕の描いたラフとはびっくりするほど違ってるっス。

貞本

マッキーのオーダーは、猫の口(唇の端が上がっているヒロスエのような口)で、性格は松雪泰子。

鶴巻

最初はドラマの「きらきらひかる」「なにさま♡っ!」の松雪みたいなイメージ。プライドがあって、男を顎で使う、みたいな。今は全然変わっちゃってるけど。

貞本

そのテイストと、「ハッピーマニア」(作・安野モヨコ)のテイストを混ぜたような感じだよね。そういう高飛車な女が2000年は来ると。

鶴巻

全然思ってません(笑)。単に自分の好みです(笑)。でも、ナディアだって、当時の価値観でいえば、ああいうキャラはまずいって思われたはずですよ。

貞本

ガイナキャラに直球の女はみたことないね。でも実は、ハル子ってガイナックス版メーテルだよね。

鶴巻

ん~、ま~、導いてくれる存在ということではそうかも。メーテルはむやみに優しいんだけど、僕にとって導いてくれる人はハル子みたいにイジワルでなければと思う。

貞本

ハル子のほうが、きっといっしょにいて楽しいよね。それにしてもマッキーは、見た目にこだわるんだったらメーテルみたいなほうがいいんじゃないかって思うけど?

鶴巻

ハル子は美人なんスよ!(強調)

貞本

ああいう性格で、ぐっとセクシーに描くのは難しいよね。

鶴巻

描かないといかんですね。

貞本

ああいうキャラクターに、キレイな顔してイジワルしてほしいね。イジワルだって思ってない顔してイジワルで、こっちはもうボロボロになるような、存在がイジワルだよ、おまえっていう女(笑)。とにかくイジワルな顔してイジワルさせるのは、うすっぺらいからやめよーよ。

鶴巻

フムフム。

貞本

マミ美は、さっき言った演出でがんばってキャラを膨らませてくれよっていうタイプ。だってコギャル系だもん、わかんないよ~。山姥コギャルなんてまったくわかんない。

鶴巻

貞本さんのキャラでショートカットでボーイッシュな女の子ってまだないですよね。あとは体育会系の男もいないから描いてほしい。今回は、ダメダメなオヤジを描いてほしいと思って、カモンが登場した。

貞本

最悪なオヤジ。目の死に具合が俺みたい(笑)。「フリクリ」って、ダメな人、多くない?

鶴巻

企画当初に、キングレコードの大月さんから「大人を出してくれ。「踊る大捜査線」のいかりや長介みたいな人を」って言われて。でも僕は大人なキャラに思い入れがなかった。カモンみたいなほうが、思い入れできるんですよ。

貞本

でも、時代は求めてると思うよ、太刀打ちできない年の功をもった人。ガイナックスにもいてほしい(笑)。

鶴巻

ゲンドウは?

貞本

あの人はダメダメだもん。ちょっとでも危なっかしい部分が露呈したらダメなんだよ。まだ冬月のほうがいいよ。

鶴巻

実は、いつかカモンも。

貞本

ナオ太が、やっぱり大人にはかなわないなぁって思う部分があってほしいね。

鶴巻

そういうことがあるかもよ。(カメラ目線で)いや、無いか…。貞本さんは、実生活でおとうさんなので、そういう気分があるんだろうけど。

貞本

僕にとってはリアルすぎるよ。総理大臣だって、日本のオヤジみたいなもんじゃない? 国民はホントはそういうオヤジたる人を求めてるよ。吉田茂とかを、ね。求めてるんじゃないかな。新興宗教が流行るのも、グルというオヤジを求めるから。学校崩壊は、先生がオヤジになってないからおこるんだと思うよ。

鶴巻

対して、ハル子って存在はよく、おかあさんのメタファーと思われるんだけど、そうではない。ナオ太の家庭に母がいなくて、そこへハル子が入ってくるという構造だからなんだけど。でもそうではないんですよ。ハル子はあくまで、ナオ太の恋人として描いていく。

貞本

年上の女ブームが来る?

鶴巻

もう来てるじゃないスか。イチローとか。

貞本

次世代にほしいものってあるかな? これまでも好きだったアイテムって、ある程度こっちに苦労を強いるものだったんだよね。手にいれたことによって、苦労まで背負うもの(笑)。だから、だから今だと自転車がほしかったりするんだよね。

鶴巻

育てロボって、そういう感じじゃない? 世話が必要だから。

貞本

大変すぎるものはいやだなぁ。犬とか猫とか好きだけど、実際世話するのは大変すぎる。ほど良くやっかいなもの。だから自転車とか、いいな。

鶴巻

単純にデザインでいえば「男携帯」がほしい。なぜ世の中には女の子っぽい携帯ばかりなんだ(笑)。

貞本

NTTに、通話料をもっと安くしてほしいね。

鶴巻

それって、アニメージュに載せるようなことじゃないのでは(笑)。

貞本

いや、まじで、こんなにお金をとってたらいかんよ。いや、むしろ、強力なライバルを設定しろといいたい。価格競争させるべきだね。それと同じでアニメ界も、もっと競走していかないと。アニメーターがこんなに使い回されてたらやばいよ。

鶴巻

人材が少ないってことなんだろうけれど。大作映画とか、みんな、スタッフが同じだものね。

貞本

なんとかね、キレイな競争をしないとね。使い回してたら競争できなくて、いずれ滅びるって。僕的にちょっと嬉しいのは、今ゲームが元気がなくなってきたこと。

鶴巻

僕はゲームも好きスけど、3DCGが過大評価されすぎとは思う。アニメとはキャパシティーがちがうといっても、そんなにおもしろいのかなぁ? とは思う。ユーザーは単にすごい絵がみたいだけなのかな。まぁアニメで1万円出すより5000円くらいのゲームで、それくらい楽しめるならいいんですかねぇ。

貞本

「フリクリ」っていくら?

鶴巻

第1巻は2800円。

貞本

じゃあ、それだけ分のストレスと喜びを与えないとね。

鶴巻

ストレス?

貞本

ストレスは、楽しみのひとつなんですよ、実は。そもそも、こういう仕事をしているのも、ストレスが発端だと思うんだよ。俺もやりたーいっていうストレスとか、それで業界に入るし、実際仕事をしはじめると、ストレスがあるからこそ続けられている気がするんだ。気持ちいいストレスがないとやっていけないと思う。

鶴巻

とはいえ、ヒットしているのは、そういうストレスを感じさせる作品だけではないのが、実情だけど。

貞本

不思議だわー。

鶴巻

それは、逆にストレス癒しモノであったりする。

貞本

ガイナでは、もっと複雑でリアルな癒しをしてさしあげますよ。この人が(鶴巻を指さす)。

鶴巻

…って僕がやるんですかー!?

貞本

ははは。まー、観ると、明日から元気に前向きに生きていこうと思うような作品にするんでしょ?

鶴巻

いや、まぁそうなんだけど。アニメって生真面目に作る人が多いですよね。だから、どえらく前向きなテーマだったり主人公だったりするけど、僕は「みんな死んでしまえ」とは思わないけど「俺が世界を救う」とも思わない。かといって、ずーと今のままで、とも思ってない。どれもリアルではないと思うんス。

貞本

ゲームなんかで、一瞬癒されても、現実に戻ったときに対処できないってことがあるじゃない。偽のポジティブシンキングってことでしょう。「フリクリ」は結果的に本当のポジティブシンキングのすすめってことになっちゃうの?

鶴巻

う~ん、難しいなぁ。悩んでいても明日は必ずやって来ちゃう。それは一時期言われていた“終わらない日常”ではないと思う。1日分、歳をとるんスよ。でも明日が来たって、すぐに変身してるなんてことはない。僕は貞本さんも、庵野さんも山賀さんもみんなすげぇポジティブだって思うんですよ。庵野さんは「アニメを芸術に」とか言ってるし、山賀さんなんて「大統領になりたい」とか言ってるんですよ、すごいポジティブ。そんな発想、ついていけない(笑)。

貞本

僕にはそんな夢ないよ。

鶴巻

僕のはしょぼい夢なんスよ。実はもうかなえちゃったし。

貞本

え、何?

鶴巻

日本をあっといわせるアニメに参加するっていう夢(笑)。

貞本

え~。彼女は? ベタベタな彼女つくってよ。きっと楽しいよ。

鶴巻

そりゃ楽しいだろうけど。そういうのって夢なのかな?

貞本

人生の1ページに加えてほしいな。

鶴巻

人生のっ! そういうの夢見たことないかも…。すごく美人の彼女がほしいとも思わないし。そういう意味では、ハル子みたいな美人にゲシゲシとイジワルしてもらうのがいいな(笑)。

貞本

二次元の人だなぁ(笑)。

鶴巻

ちなみに! 僕は、21世紀派ですから。なのでミレニアムとか、今さら騒がれても…ねぇ。僕は21世紀は2001年からって昔から言ってたほうだし。

貞本

わ、いやな子供。昔から変わってないんだ(笑)。

鶴巻

そうス(笑)。でも、21世紀になったら、ガラッと変わると思う。

貞本

「フリクリ」はそのための。

鶴巻

そうそう、20世紀最後の。

貞本

2000年はシャッフルの時期だから、浮かれてばかりいちゃダメなんだよね。モーニング娘みたいにWOW WOW言ってないで(笑)、次を考えないと、ね。

エピローグとして。新世紀型ロボット考。

鶴巻

エヴァンゲリオンで操縦系ロボットは、もうこれ以上は出ないかと思ったので、鉄腕アトム系の自律ロボットを描きたかったんですよ。そういうのって、これまでアニメであんまり描かれなくて。

貞本

ロボットって、シリアスに考えると質量の問題などが出てくる。巨大なロボットがすごいスピードで動いたら、道路とかへこむぞって、もう設定自体がナンセンスになる。だからもうそこをリアルにやっていこうとは思わなくなってくるよね。

鶴巻

最近だと「メダロット」とかが、自律ロボット系ですね。

貞本

現実には、AIBOとか出て来てるけど。

鶴巻

多分あれって、徐々に感情があるものに進化していくんでしょうね。ある日を境に、感情のあるバージョンに! とはならないと思う。

佐藤(「フリクリ」プロデューサー)

はい、ロボットの話はここまで! 次号でゆっくりネ。

鶴巻

実際、最初はロボット・カンチに思い入れが大きかったんだけど、やっていくうちに、人物のほうが描きやすくて、そっちに比重がいっちゃいがちなんですよねぇ(笑)。

(かくして、対談の最初にリターン!?)

前後の記事
<<
>>
タグ一覧

各記事の内容を示すキーワード

コメントの投稿

コメント投稿

トラックバックURI

http://johakyu.net/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/560


分類一覧
Powered by
Movable Type
Access Counter
累計:累計アクセス数
今日:今日のアクセス数
昨日:昨日のアクセス数