貞本義行 & エンキ・ビラル対談: 序破急

庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載

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月刊少年エース 2004年6月号 より

貞本義行×エンキ・ビラル

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―貞本義行先生が学生時代から敬愛しているフランスのアーティスト・エンキ・ビラルが、自身の監督作品「ゴッド・ディーバ」公開のために来日。そこで日仏両国の巨匠対談がここに実現!! 「エヴァ」人気はフランスでも高く、エンキは以前から貞本先生のことを知っていただけに、夢の対談はスタートから盛り上った。国こそ違えど、コミックと映像、双方の仕事をしているアーティスト・2人の貴重なトークをお届けしよう。

美大時代に初めて見たエンキの絵に感動!!

貞本

「僕がエンキさんの絵を初めて見たのは、美大進学のために上京してからでした。輸入コミック店で、雑誌『ヘヴィ・メタル』を見たんです。当時話題だったメビウスなどの作品も掲載されてましたが、僕は絵画的な印象の強いエンキさんの絵が好きだなと思ったんです。」

エンキ

「それは何年前の話?」

貞本

「もう20年以上前のことですね。」

エンキ

「そのころには僕はすっかり大人だった(笑)。貞本さんの絵は独自のスタイルがあるよね。きっと僕の絵に形として影響を受けているからではなく、刺激として影響されているからだと思うんだ。僕もほかの作品から刺激として影響を受けることが多いから、同じだね。」

貞本

「絵はいつごろから描いてるんですか?」

エンキ

「子どものころから描いていたよ。最初に描いたのは、母の絵をまねて描いた馬の絵。体と足のバランスが難しかったことを覚えている。貞本さんは?」

貞本

「僕は父の車を描いてました。その影響でいまも車が好きで。特にヨーロッパの車が好きですね。」

本、映画など多くの作品が2人を触発

貞本

「エンキさんのコミックと映画、どちらの仕事もされてますが、その2つとの出会いは?」

エンキ

「僕は10歳のときにベオグラードからパリに移り住んだんだけど、ベオグラード時代から映画が好きでね。映画鑑賞後に見たものを描いてたんだ。当時から僕にとって絵と映画はつながっているものだったんだろうね。」

貞本

「では、SFとの出会いは?」

エンキ

「本と映画、両方だね。最初に本で読んで、映画に移行したんだ。キューブリックの『2001年宇宙の旅』にも影響されたよ。貞本さんは?」

貞本

「人形劇ですが『サンダーバード』や『キャプテンスカーレット』が好きでしたね。それから日本には『ウルトラマン』や『ゴジラ』などSF要素の強い作品が多いので、自然に影響を受けていたと思います。」

映画を作ると自然とコミックが恋しくなる

エンキ

「フランスの作家は女性を描きたがらない傾向があるんだ。僕は違うけど。貞本さんはいつから女性を描いているの?」

貞本

「プロになってからですね。日本は女性が魅力的に描けることがプロの必須というか、そういう傾向があるので(笑)。」

エンキ

「彼女たち(レイら)はとても人気だけど、思春期の少年たちが実在しない女性に憧れるのは、危険なことなのでは?」

貞本

「(笑)。危険かもしれませんが、日本では昔から魅力的なキャラに憧れて、男の子が成長していく風潮があると思います。逆に『ゴッド・ディーバ』のジルなど、エンキさんの描く女性はかなり苦行を強いられているように見えるのですが?」

エンキ

「そんなにヒドイかな?(笑)確かに映画ではジルがレイプをされる場面があるけれど、そのときの彼女はまだミュータントだから女性として迫害されているわけじゃないんだ。それから、僕の作品内で男性も女性も苦行を強いられているとしたら、それは政治的な背景があってのこと。僕がバンド・デシネ(フランス語圏のコミックのこと)を描き始めた背景にも、性の解放を訴えたり、アーティストの環境改善を求めたフランスの反抗時代があったので、政治性を盛り込んだ作品が多いんだ。」

貞本

「コミックを描くことと、映画を作ることの共通点はありますか?」

エンキ

「コミックを描いているときも常にフレーミングを意識してるんだけど、これはカメラワークと似ていた。」

貞本

「逆に違いは?」

エンキ

「大人のコミックを描いてきた僕にとって表現的な規制はないけど、映画は時間など商業的規制があったね。」

貞本

「今作は3人だけ役者が出てますが、生身の人間が演じることで思い通りの表現にならなかったこともあるのでは?」

エンキ

「いや、彼らが僕の思惑と違う表現をしてくれることが逆におもしろいんだよ。コミックは1人きりの作業だけど、映画はいろんな人とできるから楽しいね。」

貞本

「それは僕もわかります。マンガは孤独な作業なので、それが続くと今度はアニメーターの仕事がしたくなる(笑)。今後、CG技術に期待することは?」

エンキ

「映画を作るなら、やっぱり生身の人間に演じてほしいけど、僕の作品にはミュータントが出てくる。やはり彼らはCGで描くから、人間との合成がもっともっと滑らかになることに期待したい。」

貞本

「では、最後に映画のことを。」

エンキ

「この映画にはいろんなメッセージが込められているんだ。登場人物それぞれに背景があるので、是非そこを見てほしいな。」

貞本

「次回作の予定もあるのですか?」

エンキ

「いや、貞本さんと同じで、映画の次はコミックだね(笑)。」

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