特集「キューティーハニー」で遊ぼう! クリエイターぶっちゃけ座談会: 序破急

庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載

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庵野秀明×安野モヨコ×出渕裕×摩砂雪×寺田克也×すぎむらしんいち

Weekly ぴあ 2004 6.7 より
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映画公開中に特集記事が掲載された。

議題 映画『キューティーハニー』で“遊べた”こと 完成までのプロセスをふり返る

足かけ4年にわたるキューティーハニー映画化プロジェクトを開始当初から知るクリエイターの面々

ハニーやパンサー・クローの設定はどのようにして生まれたのか? その過程を振り返っていただいた。

――今回、キャラクターデザインを一番最初にお願いしたのは?

奥さん(安野モヨコ)が早いかな。当時はまだ結婚してなかったけど。

実写で撮るって聞いたときは、けっこうびっくりしましたね。なんか意外で、そっちに行くんだみたいな。

企画段階はモヨコさんが登場人物全部のイメージを描いてたよね?

そう。カラーで1枚、サクッと書いてって。え~、カラー? って(笑)。

付き合いはじめにつけこんで頼んだのは確かです(笑)。

モヨコさん、他のクローたちもけっこう描いていたじゃない?

最初は12人くらいいたんです。

それを全部書いたの。最初のイメージイラストみたいなもの……。でも全部没ですよ、もー(笑)。

当時、庵野とはバカバカしいアイデアばかり出しあって、それをイメージボードにまとめてた頃だよね。

でも現実的に考えて4色カラーの四天王になった。そのあたりでブッちゃん(出渕)に会ったときに「今度ハニーやるから、怪人よろしく」って頼んだんです。

――ハナから怪人ってことですか?

いやもう、怪人怪人(笑)。ハニーをやれって言われたら困っちゃう。

で、企画が動き始めて実際にデザインを頼めるとなった段階で、寺田さんに主役をお願いしたんです。

監督から頼まれるのがイチバン早いですよ。何をやりたいかわかるし、狙いが言葉の端々から出るから。

僕が庵野さんから「こんな感じで」って言われたときには「もうできてるじゃないですか」って感じ。

和洋折衷の鎧にして下さいと。

庵野サン的には僕が『サムライダー』って漫画を描いたからだと。腹筋とか太ももとか強調して鎧だけど肌が出ているっていうアイデア。

そのときは、片桐はいりさんがやるって決まってたんですか?

そう。だからエラを意識して作りました。片桐さんらしさを活かして(笑)。撮影には行けなかったけど、彼女がノリノリで着てるって聞いてよかったーと。オレは4人の中で“お笑い”担当なのかと思って。ゴールドだからゴールデンレトリバーの写真をつけて、勝手に愛犬家って設定にしたんです。

さすがに、やめて下さいって。

えー。スゴイ良かったのに。

――寺田さんが作ったときには主役は佐藤さんに決定してたんですか?

多分そうなると思うって段階で、最初から彼女をイメージしたんです。

そう、脚が長いという前提で。

最初に思いついたのがそこだった。脚が長いと絶対かっこよくなるから。普通こういうスーツを着ると必ず脚が短く見えるんです。それが本当に悩みの種。だからサトエリみたいに異常なほど脚が長くないと、かっこよく見えないんですよ。これ、奇跡的なキャラクターなんです。

――監督からのオーダーは?

チョーカーは必ず付けると、あとは胸は必ず見えるようにして欲しい。

それと肩は必ずカバーして欲しい。原作のハニーは肩の部分が丸出しなんですけど、そのままだアクションをするときに絶対ケガしちゃう。だからできるだけ全身を覆った上で、セクシーに見えるように胸元だけはのぞくようにして欲しい。

そうね、見せるべきところは見せる(笑)。そこはハニーのウリで。まあ受ける側も庵野さんから来た仕事だから、何を出しても大丈夫だろうと。そこらへんが信頼関係。でも最初、オレは庵野さんからもっとオーダーが入るかと思って覚悟してたんですよ。でも意外にすんなりと。

最初にコンセプトが見えていたからね。多重構造にしたりとか。

で、いったん上がったんだけど、いつもの自分の作品とあんまり変わり映えがしない気がして。やっぱりキューティーハニーらしさみたいなものがいるんじゃないかと思ったんですよ。それがハートだなと。

――先にハニーを作ってから、敵のコバルトクローを作ったんですか?

いや同時ですよ。コバルトはデザインを描いてから身体がグニャグニャするって設定になってきて。

<最初はラバーで拘束具みたいにするという発注だったんです。寺さんに描いてもらったデザイン画を小日向(しえ)にみせて「これ、やる?」って聞いてみたら「やってみます。でも胸が自信ないけど」と。でも実際に着たら、胸にちゃんと谷間ができて本人が驚いていた(笑)。「こんなに谷間ができたのは初めて」って。

体の中心が開いているというコンセプトが難しかったんですが、うまくいきましたね。

――安野さんのスカーレットクローのミニスカ着物というアイデアは?

着物にして欲しいって監督に言われたんです。着物で動きやすさを考えると、長いわけにはいかないんですよ。後ろにはしょる感じになっちゃう。だからいっそ短くしてしまえと。傘は最初から持っていたかな? アクセサリーは長いラインピアスが流行っていたので、髪の毛の根元からたらしてみたんです。デザイン段階でははっきり新谷さんとは決まっていなかったんだけど、髪にかなりボリュームのあるスタイルなので、大きい人だととてもデカイ感じになっちゃう。脚もハイヒールだし。だから身長とスタイルのバランスがとっても良かったです。

頭がガコッて開いてビームが出てくるのは?

あれはオレが描きました。

あれはCGでやってるの? それとも実際に作るんですか?

あれは作り物なんですよ。

――安野さんが一番好きな部分は?

髪型かな。髪を止める組みひもの真ん中に宝石が入ってるんです。そのデザインは私の中では最初から決まっていたんですけど、おでこの部分をシメナワみたいな太いものにしろと監督に言われて。ダサイからやめようって言っても、聞いてもらえなくて。私は怒りのあまり筆箱を投げてですね……。

いや、映画にしたとき細いとわかりづらいから。もうちょっと太くしてくれって言ったんですけど、可愛くなくなるからダメだって言われて。そこは折れました。

筆箱を投げた甲斐がありました。

――出渕さんのブラッククローは?

ナチの親衛隊みたいにっていうのと、剣を使うというのがオーダー。でも監督と話をしているうちにオタク妄想が爆裂し始めて。あしゅら男爵にしようとか、ブロッケン伯爵だとか。剣の方も“バードスの杖”に。バードスの杖というのはあしゅら男爵が、機械獣を操るのに使う杖のことです。先が本当にマイクみたいになってて、これははずしてミッチーに歌ってもらいましょうよと。

まあ、後押しですよね。「オタクに寄っちゃって大丈夫かなあ」ってドキドキしていると出渕先生がやってきて後押しをしてくれるんです。

――今度はみなさんに映画の中身についてうかがいたいのですが。

見終わってしみじみ思い出せるというのは、いい映画だと思うんですよ。頭の中で反復できる部分がある。サトエリ自身とかなりシンクロした内容になってると思います。

よくも悪くも佐藤江梨子の映画になってる。それは映画としては正しいんじゃないかな。ハニーのキャラクターに忠実かというと、違うという人は絶対いると思うんですよ。でもそれはそれでいいと思わせるパワーがある。いい意味でバカ映画になってくれた。庵野監督がリセットして次のステップに行くための、重要な作品になったと思います。

出渕さんがいてくれたおかげで、オタクな部分のある映画にもできました(笑)。出渕さんがいてくれなかったら、どうなっていたことか。

俺かよ!ここは聞き流して(笑)。

今回はオールCGにしてもいいところを、現場でしっかり撮影しようという撮り切りのシーンが多かった。撮影が大変なセットも、みんなが必死でやってくれたのは凄いことだと思います。昔の特撮モノの爆発シーンは、CGがないから撮影現場で曵光弾とか使っていたわけで。今は撮影した後にチョコチョコっとポスプロ時に合成したりするんですが、そういうことをあまりせずに等身大で撮ったんです。人間の見た目でね。監督も今回は万人に受け入れられるものを作ろうとしてたよね。いつもは俺についてくるコアなファンだけでいいみたいな感じがあるけど(笑)。

僕は映画自体がふつうに面白かった。それに尽きるんじゃないかな。今は偏ったものが多いけど、パッケージ全体が面白いものを作るのは大変なことで、庵野さんがそれを『キューティーハニー』でやったのがうれしいですね。庵野さんのオタク部分がすごくいい方に生きてる気がする。他の監督だったらここはギャグだから流して撮るみたいなところを、同じパワーでちゃんと撮ってる。

私が一番泣いたのは夏子がクライマックスで「ハニー」って叫ぶところ。原作の夏子はめちゃめちゃイイ子で、主役につくしまくる。映画版ハニーの夏子はちゃんと自分の人生を生きてますから。女の子の観客を狙ってジャストで作っていっても、痛いだけだと思うんですよ。見てもああそうって共感で終ってしまう。『ハニー』はその上にまた何かがあると思う。見て共感しただけじゃなくて、元気で明るい気持になれたってことが大事なんだと思うんですね。

一番最初に撮ったのは冒頭のお風呂のシーン。そのとき佐藤江梨子がまだ固くて、セリフを聞いても上がっているのがよくわかった。でもその後の「ハニーフラッシュ!」って叫ぶシーンで急に彼女が変わったんです。いろいろ考えてたみたいなんだけどメーターをイッキに振り切った感じ。撮影初日にそれを見て、ああこの映画は大丈夫だって思いました。そんな風に、ひとコマひとコマ、ものすごく時間をかけて検討しています。だから「どこを見て欲しいか」と聞かれれば、もう「全部」と答えるしかない、そんな映画なんです。

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