庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載
既存のアニメの常識を覆す掟やぶりの展開、
そして観るものに投げつけられた衝撃のラストとともに、
今だに波紋を残し続ける「新世紀エヴァンゲリオン」。が、その直後、今度は「ラブ & ポップ」で実写の商業映画に進出。
常に意外性と斬新さで広く注目を集める
異才・庵野秀明、その作品作りの根底にあるのは?初の劇場用実写映画「ラブ & ポップ」でのエピソードを尋ねると、
「もう、去年の夏なんで忘れちゃいましたね。初号終わったらもうフィルム見ないんですよ」
と笑う庵野監督。神経質、凝り性、完璧主義…そんなイメージがあっただけに、結構意外で拍子抜けしてしまった。
「そんなに(自分は)ハードディスクの容量がないんで、終わったらクリーニングしていかないと、次のやつが入っていかないんですよ(笑)。今はもうインストールしなおしているところです。いつもその企画用に勉強なり、知識なり、自分の中に合わせて入れていくものなんで。だから『エヴァ』も“忘れてる”って言うと、“そりゃ忘れてるふりでしょ”って言われるんですけど、本当に忘れてるんですよ。そうしないと『ラブ & ポップ』はできない」
―でも「ラブ & ポップ」のラストで、主人公が自問自答を繰り返すところなんか、「エヴァ」を想起する人は多いんじゃないでしょうか?
「まあ、同じ人間がやってますから。方法論の少なさが身につまされますね」
―では、あれをやりたかったんじゃない?
「じゃないです。あれしかできなかったんです。情けない話です。本当は可能な限りやることは変えたい。世の中には、変わらないことをもって作家性ととらえることもありますけど、僕はそれだけはやりたくない。でもそこで己の限界がでてきて、その度に嫌だなァと思うんですけど」
―でもファンは、庵野監督の作家性に期待しているのでは?
「あれは、買い被りですね(笑)。」
―そういう作家論とか作品論については?
「感情的にはうっとうしいですね。僕と『エヴァ』も、僕と『ラブ & ポップ』も全然別のものですから。両方とも僕がまとめ役になっているだけで。それに料理と同じで、皿に盛り付けて、客の前に出したら、コックの仕事は終わり。それを食うも食わないも、後はお客さんの自由ですから」
―では庵野監督は、いつも違う料理を作っていきたい?
「できれば和・洋・中なんでも。和食を作ったら、次は洋食を作りたいですね。和食ばかりだと自分でも飽きてきちゃうんですよ。お客さんも飽きちゃうでしょ? また同じかァと。でもお客さんの中には、それを安心と感じる人もいる。同じ快感が得られるという…でも僕は快楽の反芻には興味がないんですよ」
―それでは庵野監督らしさがでるのは、製作のどんな過程だと思いますか?
「自分らしさって、あんまり分からないんですよ(笑)。できれば消したいくらいです。そういうのなしに、ただ単に作品を面白くしたい。僕にとっては面白さが再優先で、自分を表現したいとかはあんまり考えてないんです。自分が言いたいことを言うというよりも、こう言ったら面白いだろうとか、お客さんが観た時のことを考えますね。まあ、一番の客って自分なんで、まずは自分が観ることを考える。第一、自分がうまいと思わない料理を出す料理人は、いないと思うんですよ。もちろん素材とかね値段とかに合わせてですけど。自分が面白いと思わない限り出せない。人様に物を出すというのは、そういうものだと思うんです。おまけにこれは人様からお金をもらって作ってるわけですから」
―なるほど。ではさっきハードディスクをインストールしなおしているところだと言ってましたが、次はどんなものになりそうですか?
「(ちょっと間を置いて)アダルトビデオいいっすよ(笑)。あんまり観たことないんですけど、アダルトビデオの周辺にいる人、あそこにもいるんですけど(『ラブ & ポップ』の撮影ドキュメンタリーを撮っているカンパニー松尾氏を指差しながら」、面白いんですよ(しみじみ)。今までにない世界ですよ。僕の周辺にいる友人、知人、仲間含めて、ああいう職種、いや人種の人には今回初めて触れたんで。そういう人たちを知るチャンスができたからには、この機を逃してなるものか、と。ここ数日いきなり引きずり込まれまして。何か一線越えたような気がするなァ(笑)。
と、ここで「AVの血って、誰にでも流れてるんですよ。SEXって、生きる上で大前提じゃないですか」とカンパニー松尾。庵野、うなずきながら
「人の基本ですからね。でもみんな羞恥の部分を含めて隠蔽したがる。でも中には隠蔽を気にしない人がいるんですよ。それが本当にないのか、どこでなくなるのか…。いや~、面白いですよ」
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