「ナディア」の音楽世界について: 序破急

庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載

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CD『ふしぎの海のナディア Vol.3』 より
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●今、敢えて'70年代

「ナディア」という作品において、私が関わる全ての物にこだわりをもって強制した一つのモチーフが有ります。

 それは'70年代、という事です。フィルムは、絵柄、設定デザインから世界観、セリフ回し、カット割りにカメラアングル、果てはSE(効果音)まで所謂、今風のトレンディーなものは避けて、極力、古臭いものにしています。いってもせいぜい、“Nowいもの”まで。

 つまり「ナディア」は「今時分、こんなものを・・・」という代物が集まってその世界を構築しているわけです。これは別に「昔は良かった・・・」というノスタルジーに浸って作っているからではありません。「ナディア」を流行に与みしない、少しでも恒久性のある作品にしようと思ったとき、今風なものを必要としないので、みるみる消去されていっただけなのです。

●だから消去法の結果としての'70年代。

 つまり「ナディア」あ「1889年を装った'70年代の日本」をベースに作劇されているわけです。

 アニメーションというメディアが、急激なインフレーションによる、ひずみと亀裂によって、のたうちまわっている―現在に、現代的なものを取り込んで、さらに恒久的なものを作る方法論を展開できれば、それに越したことはないでしょう。しかし、今の私たちにはそれができないのです。口惜しいけど―(まあ、そのいいわけは始めるとキリがないので止めときます・・・トホホ)

 だから、音楽に関しても、あえて古いものを'70年代から'80年代のものを頼みました。常に時代の最尖端を行く音楽家の方々には大変失礼な事だったと思います。が、しかし、敢えて、'70年代のフォークやロック。そして、クラッシックとジャズ。それと私が好きな曲。後は所謂、劇伴。これらで「ナディア」の音楽は構築されています。

 (私のわがままな注文を快く聞いてくださった作曲の鷺巣さん。音楽監督の清水さん―ありがとうございました。)

●ここのモチーフについて

 以下、少しだけ色々なキャラクターの曲について、発注の際のイメージやモチーフ等を述べておきます。

■ジャンとナディア。

 ジャンは明るいのや暗いのやテーマアレンジ等、色々と作り過ぎて、結果として散漫なイメージになってしまい、テーマアレンジの他はこれといって印象がつかなくなってしまいました。トホホ・・・。

 ナディアはアフリカの民族音楽っぽさを狙ってもらい、これはうまくいっていると思います

■マリーとキング。

 これは、明るいピアノの曲でよろしく。これが全てです。

■悪の三人組。(このフレーズも今では懐かしいだけになってしまった)

 これはジャズです。ジャズみたいなアドリブの多い曲は「ナディア」のように絵に併せて曲を編集するタイプの音作りには難しいのですが、敢えて挑戦してみました。これは極めてグー!! な結果になっていると思います

■ネモ艦長。

 この人はパイプオルガンと相場が決まっているので、そうしました。

■ノーチラス号&N・ノーチラス号。

 これは絵のデザインと同様、私の好きな曲をモチーフにしてもらっています。―すみません。

■ガーゴイル。

 彼は私のお気に入りのキャラなので、特にバロック調の高級感を狙ってもらっています。

■ネオ・アトランティス。

 この団体は自分達の事業に誇りを持ってやっている人達の集まりなので、あえて暗さを取り払って派手に、重く、更にコーラス付の宗教っぽさも入れてもらって、受けを狙いました。

■海よりも優しく。

 ズバリ'70年代のフォークを狙っています。ナディアのイヤな部分を強調すべく作ってもらいました。

■レッツ・ゴー・ジャン君

 この歌は昔のアニメの特撮物のオープニング狙いです。この手の作詞はまだ、楽でありました。

■どうしてそうなの?

 これは'70年代のグラムロック。パーペキである。

■愛の三人組。

 これは敢えて、モチーフとなったもののイメージからできるだけ遠ざけるべく、若人のメッセージソングにしました。この曲が一番NOWい、と思います

 が、しかし、詞はとことん恥ずいぞ! 身の程を知るべきであったと多少後悔しております

(「ナディア」でセリフにして語っているテーマのほとんどはこの詞に託している。)

■はじめての恋

 これはナディアが劇中において変革を果たすきっかけとなるはずの「恋」をテーマに作りました。つまり、これは「ナディア」という作品のイメージソングなのです。

 しかし、30近い男女が3人集まって初恋がどうのと語り会うことは大変恥ずかしいものでしたが、いずれは良い思い出となってくれるでしょう・・・。

―最後に―

 『ナディア』の音楽を計、100曲以上も頼み、メニューを二度も追加するという、厚顔無謀な行ないを快く承諾してくださった、東宝音楽出版の大石さん、ユーメックスの藤田さんを始めとする関係者の皆様、本当にありがとうございました。

――'90 11月7日

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