デジタルアニメの未来: 序破急

庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載

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別冊宝島330号「アニメの見方が変わる本」 より
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ある意味、新海誠監督『ほしのこえ』の出現を予測する発言あり。

画材が変われば絵も変わる。
監督や演出家はその認識を持ってほしい

 現行のデジタルアニメに関して作業効率の向上を目的とした利用、演出効果を目的とした利用の二つを取材してきた。こういったデジタルの使用方法を踏まえたうえで、作品を最終的に決定づける存在、すなわち監督の立場にある人物に、今後のアニメ業界はデジタルにどう対応するのかを聞いてみることとなった。その人、かつて『オネアミスの翼 王立宇宙軍』で世のアニメファンを驚愕させ、現在はゲーム業界で活躍中の山賀博之監督である。

セルを模倣するその先

「各社さんがデジタルのいろいろな用途を見出しているのは、結局は人が安いか機会が安いか、というコスト面での経営判断があったということでしょう。デジタル化といってもマシンのオペレーターは必要ですから、一人あたりの作業量は増大します。結果としてコストダウンにならなければ、デジタル化に移行する意味はないわけです」

 結局のところ、まだマシンパワーの問題と機械そのものの価格、ソフトの充実度など様々な問題が重なっているのが現状のようである。では、新しい表現技法の開拓という面でのデジタルはどうなるのか?

「その前に、僕はデジタル側の人たちのアプローチの仕方に問題があると思うんですよ。デジタル側というのはソフトの開発者ですが、彼らは主役を演じようとはしないんですね。セルで制作されている現場に潜り込もうとしているだけです。しかし問題視されているのがコスト面である以上、人間の手で描かれたもの(セル)が必要なくなるか、やはり機械はまだいらないのかのどちらかしかないわけです。両方とも現場には入れない。その判断ができていない。セルの模倣をするというのはもちろん必要な部分ではあるだろうけれど、その先はないのかと言いたくなる。

 画材が変わるわけですから、絵も変わるはずなんですよね。いつまでもセルという手法から生まれた技法にこだわり続ける必要はないと思います。セル特有のベタッとした質感を変えたりとか、実線のようにクッキリ分かれてしまう人物の影を自然な陰影の表現に変えるというような、コンピュータならではの技法があるわけですから、もっと欲をもつべきではないかと思います。現行のアニメ制作用ソフトからは、そういう意欲を感じないですね」

監督の仕事

「それから、監督なり演出なりといった、その映像を設計していく人間はデジタルについて詳しくなければならないことも付け加えておきます。設計する側が、コンピュータを前提とせずに映像を設計してしまうと、どんな優秀なオペレーターを連れてきても単なる作業で終わってしまう。最初からオペレーターが設計した映像というのは、作画監督が作った映像ではないですよね。アニメ業界でコンピュータを使っていくということは、設計者(監督)が実際に使うソフトなりツールなりを完全に理解し、これならばこういう映像が作れるといった認識が必要不可欠です。こういう人が少ないのも、デジタルが浸透しない理由の一つでもあるでしょう」

 監督ならば使う画材を理解しておく必要があるというのは、理解しやすい話である。

「おかしいのは、こういった作業、映像の設計などは従来のセルアニメでは自分の手で描いていたわけでしょう? 絵コンテなり動作チェックなりは全部自分で見ていたわけですが、コンピュータになると、途端にオペレーターに頼ってしまう。些末的な修正やコントロールまでやれとは言いませんが、少なくとも絵コンテぐらいはそれで作ってみろと言いたいですね。実際には、監督や演出家は最低限、今までとは画材が変わったんだという認識はもってほしいです。

 それにデジタルが合理化できれば、面白い状況になることもあるでしょう。極端な例ではありますが、昔は自主制作アニメを作ろうとしたら、友達をだまし、親をだましてお金を山のように集めて(笑)、人を百人も二百人も集めるわけですよ、僕らがやっていた頃は。それが今ではビデオとマッキントッシュがあれば、ひとりないしふたりくらいでできてしまう。例えばコンピュータを買うぐらいのお金を持っているけれども、何百人も集めるようなエネルギーは持ち合わせていない人間でも、自主制作アニメは作れるわけです。」

 ある意味、これは若い才能を発掘するには最適ともいえるシステムではないだろうか!?

インディーズがアニメを進化させる

「これは極端な例ですけど、こういった状況がプロの世界でも行われるようになったら、内容的にも面白いでしょうね。いわゆる音楽業界でいうインディーズの感覚ですが、お客さんとしてもいろんな層から選択できるというのは魅力的だと思いますけどね。そういうのをイヤだという人もいるでしょうが、ある意味、自由にものを作って、結果面白いものが出てくるという裾野の広がりになりますよね。これはあくまでコンピュータがあっての話ですから、デジタル化が成功しなければ不可能な話ですよ。

 そんな想像的な話をした後で、アニメがデジタル化するのかどうか、と問われれば、それはそうなるでしょうと。アニメ業界の人間は極めて現世的な人種ですから、この人たちがデジタル化しようと言うからには、そうしなければならない理由があるんですよ。そう言われ続けても動かなかったのが十年前だったんですが、今ではもう動いているわけです。これはもう、理想論でもなんでもなくて、必然といえる現実ですね。

 そして、それによってアニメは新しい方向へと進んでいくべきだし、またそうしていくのは、先述の極めて現実的な人間とは別に、僕のような少し浮き世離れしたような(笑)人間の義務であり、仕事でもあるのではないかなと自分では思っています」

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